たま

金の糸のたまのレビュー・感想・評価

金の糸(2019年製作の映画)
4.0
金継ぎ。
割れた陶磁器を漆で繋ぎ、金で装飾し修復する。
より強固で美しい代物となる。

ジョージアは、かつてはソ連の構成国、つい最近までグルジアと呼ばれていた国。
2008年には領土を巡ってロシアとの戦争が起き、領土の一部を失った。

79歳の誕生日を迎えたエレネ。
娘夫婦と旧市街の集合住宅に住んでいる。
足の悪いエレネはもう家の外に出ることも出来ない。

そんな時、かつての恋人アルチルから電話がかかってくる。
姿こそ見えないが、気持ちはすっかり過去に逆戻りする。
60年前、通りでタンゴを踊った思い出が蘇る。

お互い高齢で足腰も悪く、逢いに行くことは出来ないから、「私たちは年金暮らしのロミオとジュリエットね」と言う。
なんだかとってもロマンティック。

そこへ、エレネの娘の夫の母親ミランダがアルツハイマーを発症したため、同居することに。

ミランダは、ソ連時代の政府の高官だった。それを今でも誇りに思っている。
一方、ソ連時代エレネの母親は収容所に送られ、エレネ自身も作家としての活動を制限されていた。
ミランダとは相容れない関係だった。

自由に創作活動が出来る現在、79才になったエレネは今も意欲的けど、ミランダは、ソ連時代を懐かしみ、ヨーロッパの文化に染ったジョージアを嘆く。

それぞれの過去、それぞれの生き方が交差する。

それでもどんな関係も修復できないことは無い。より強固により美しく。
ジョージアという国の未来を願う思いがタイトルから伺える。

しっとりとした良作です。
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