kkkのk太郎

マッドゴッドのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

マッドゴッド(2021年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

クリーチャーの跋扈する阿鼻叫喚の暗黒世界を、ストップモーション・アニメの手法で描き出したサイコ・ホラー。

2022年最後の劇場鑑賞はこの作品。
…うーん、年の瀬になんてものを観てしまったんだ😵‍💫
おかげでゲッソリした気持ちで年越しすることになってしまった…。

『スター・ウォーズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』などを手がけた特殊効果界の神フィル・ティペットが30年という年月をかけて作り上げた狂気の坩堝。
クラウドファンディングや裕福な友人からの支援により資金を集め、それでも足りないところは私財を投げ打って製作費を捻出したという、まさに執念…というか怨念の一作である。…この人頭おかしい(褒め言葉)。

「オッス!ワイは神や!ワイに逆らう気ぃやったら、おんどれの敵でもドン引きするぐらいシバきまわしたるさかい、覚悟しとけやボケェ!!」
という高圧的な聖書の引用から映画はスタート。
そしてこの引用文に偽りのない、血みどろで残虐な地獄絵図が90分間にわたりスクリーンに映し出される。

台詞は一切ない。ただただ、地獄の底に蠢くクリーチャーたちの姿が描かれる。
世界観や登場人物の説明が不足、いやさ素より説明する気なんて更々無いといった作風の上、唐突に実写パートが挿入されたりするので、ストーリーを追いかけようとすると頭が混乱するのは必至。

斯様なアーティスティックな作風、かつ圧倒的な密度のストップモーション・アニメーションということで一見難解な作品だが、描かれていることは至ってシンプル。
それすなわち、弱肉強食という自然界の掟と、「破壊と創造」というヨハネの黙示録だったりヒンドゥー教の主神シヴァを想起させる真理。
フィル・ティペット本人がインタビューでたびたび「ストーリーは天から降ってきた」と語っており、ロジックにより創り上げられた物語というよりは、一種の預言のようなものだと理解した方が良いのだろう。

残酷さと可愛らしさの同居するそのルックは、ヒエロニムス・ボスの絵画をそのまま映像化したかのような趣き。
この画のインパクトは確かに強い。
確かに強いのだが、「こんな映像今まで観たことない!」というレベルでは無かったように思う。
というのも、特に日本の漫画やアニメにはこの手の血みどろ残酷地獄巡り的な作品が結構ある。
例えば宮崎駿の『風の谷のナウシカ』(原作)であったり、林田球の『ドロヘドロ』。
未見のため詳しくは知らないのだが、つくしあきひとの『メイドインアビス』や堀貴秀の『JUNK HEAD』にも似ている。
またこの難解な世界観は押井守の『天使のたまご』を髣髴とさせる。

事程左様に、日本の漫画/アニメにはこの手の世界観を持った作品が多く、それらを遥かに凌駕するほどのカルチャーショックは、この作品からは残念ながら感じ取れなかった。

凄いか凄くないかでいえば、間違いなく凄い!
半端ではない熱量を持った作品である。
しかし、面白いから面白くないかでいえば、正直全ッ然面白くない🌀
何度寝そうになったことか…💤
多分好きな人はとっても好きな映画なんだと思うのだが、特別ストップモーション・アニメに思い入れのない自分のような観客にとっては、なかなかにツラい鑑賞体験になってしまいました。。。

とはいえ、制作期間30年、一人の男の脳内世界をそのまま具象化。こんな狂気的なストップモーション・アニメは今後絶対に登場しないだろう。
間違いなく一見の価値はあると思います♪…グロ耐性は必要だけど😅
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