masahitotenma

めぐりあう時間たちのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

めぐりあう時間たち(2002年製作の映画)
3.8
マイケル・カニンガムの小説「めぐりあう時間たち 三人のダロウェイ夫人」をスティーブン・ダルドリー監督が映画化。
ヴァージニア・ウルフの小説「ダロウェイ夫人」をモチーフにして、異なる時代に生きる3人の女性の一日を、交錯する物語構成で綴る。
音楽はフィリップ・グラス。
ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープの3人が、そろってベルリン国際映画祭銀熊賞 (女優賞)を受賞(共同受賞)。
原題: The Hours  (2002)

“Mrs. Dalloway said she would buy the flowers herself.”(「花は私が買って来るわ、とダロウェイ夫人が言った」)
この書き出しから始まる小説「ダロウェイ夫人」を1925年に完成させた作家ヴァージニア・ウルフは、
1941年、夫へ感謝と「私たち二人ほど幸せな二人はいない」と云う言葉を残して、川へ入水自殺する。

①1923年の英国・ ロンドン郊外のリッチモンドでのヴァージニア・ウルフの一日。
過去に二度自殺未遂騒ぎを起こしたヴァージニア(ニコール・キッドマン)は、心の健康(療養)のために夫とロンドンから田舎町に移り住み、小説「ダロウェイ夫人」を書き出す…。
姉と姉の子どもたちが訪ねてきても、上の空で、都会のロンドンに戻ろうとする…。

~脇役~
・夫、レナード・ウルフ(スティーヴン・ディレイン)
・姉、ヴァネッサ・ベル(ミランダ・リチャードソン)
・姉の子ども、クエンティン(ジョージ・ロフタス)
・家政婦、ネリー(リンダ・バセット)

"姉への口付け"

「人生から逃げたまま平和は得られないわ」
"you can't find peace by avoiding life."

「命の価値を際立たせるため、誰かが死ぬ。対比させるの。
○○が死ぬの。"幻視者"」

②1951年、ロサンゼルスでの主婦ローラ・ブラウンの一日
第二子を妊娠中のローラ(ジュリアン・ムーア)は、夫の誕生祝いのケーキを焼き始める…。
夫と子どもに愛されていたが、心が満たされず、小説「ダロウェイ夫人」を愛読して、ヒロインに自分を重ねていた…。

"親友への口づけ"

「子供を産まなければ一人前の女ではない」

~脇役~
・夫、ダン・ブラウン(ジョン・C・ライリー)
・息子、リッチー(ジャック・ロヴェロ) 
・親友、キティ・バーロウ(トニ・コレット)

③2001年、ニューヨーク・マンハッタンでの編集者のクラリッサ・ヴォーンの一日。
女性パートナーがいる編集者のクラリッサ(メリル・ストリープ)は、詩人で小説家である友人の受賞祝賀会を企画し、花を買いに行く…。
二人には10代の頃一緒に過ごした美しい思い出があり、クラリッサはエイズに侵された彼の世話をしているが、彼は精神的に混乱が深まり祝賀会に出ないと言い出す…。

やがて、リチャードの母親(○○・○○)がやってくる…。

~脇役~
・友人、リチャード・ブラウン(エド・ハリス)
・パートナーのサリー・レスター(アリソン・ジャネイ)
・娘、ジュリア・ヴォーン(クレア・デインズ)
・リチャードの元彼、ルイス・ウォーターズ(ジェフ・ダニエルズ)
・バーバラ(アイリーン・アトキンス)

「後悔してどうなる?…あの暮らしは死だった。私は生を選んだの」

「意識の流れ」の手法を用いた作家ヴァージニア・ウルフの「灯台へ」と並ぶ代表作「ダロウェイ夫人」。
その物語と、精神的な病を抱えロンドン大空襲で家が破壊された後に自殺したヴァージニアの人生が、3人の女性と交差した巧みな物語構成で綴られる。
実力のある女優3人の演技が楽しめる見事な芸術作品。
音楽も美しい。
特殊メイクを施し過ぎのニコール・キッドマンがオスカーを受賞したが、個人的にはジュリアン・ムーアにあげたかった。
masahitotenma

masahitotenma