これまた面白い台湾映画に出会えた。作品全体の印象は香港映画に近い。
想像以上に登場人物の設定が緻密に計算されており、ストーリーラインが面白いものになっている。先週観賞した『Dark Heaven』よりもストーリー上に感情の起伏がみられ、より現代の作品に近いと感じる。ファムタファールのような女性の存在に、女性関係にだらしない男性。とりわけ晴美の扱いは少しかわいそうだ。もし玉嬋が魁元のプロポーズを受け入れていたら、晴美は魁元に捨てられることになる。そう考えると魁元がいかに身勝手な人物であることがわかる。また魁元は都合の悪いことがあると女性に暴力を振るう、晴美を草むらで襲いかかろうともしていた。客観的にみると魁元の人間性には驚く。こういう身勝手な男性を描くのがまた面白いのだろうが。当時はバイオレンスな男性＝たくましいという固定観念があり、女性はそういう男性を理想像にしていたのだろうか。疑問であると同時にそういった社会背景を視野に入れても面白いかもしれない。映像構成という観点からはサウンドトラックがリズミカルであった。映像という視覚情報よりもサウンドトラックという音響効果が印象に残ってしまうというのが正直な感想である。顔をぶった瞬間に音楽が急に流れる。魁元がバイクに乗るシーンでは決まって同じような音楽が使われている。音楽はシリアスさやペイソスを強調するというよりは、物語をコミカル且つリズミカルなものへとしていることがわかる。これらは監督の趣味なのだろうか。それとも当時の台湾映画の決まった作り方なのだろうか。実に気になる。（私があまり台湾映画に詳しくないというのもあるが）最後にカット割りとキャメラワークについて掘り下げておきたい。上記でサウンドトラックと映像の融合性について話したが、この映画は随所でみられる素早いモンタージュやカット割りも際立っている。例えば、以下の写真をみてもらいたい。玉嬋が魁元の顔をひっぱたくシーンだ。映画の中盤から少し後くらいだったはずだ。魁元が玉嬋に顔をひっぱたかれた瞬間、画面は顔のクローズアップになり、カットが淡々とサウンドトラックとともに変わる。そして二人の顔が交互に移り変わる。ちなみに殴られた魁元の顔を下から映し出すショットは私のお気に入りだ。目つきが良い。香港のアクション映画の主人公を思い出す。『危険的青春』には『Dark Heaven』にみられないカットの連鎖であり、監督は普通の水準に近い映画作品を作っていたということがよくわかる。冒頭でも述べたが現代の映画作品に近い。ある種、カットと表現においては先駆的なのだろうか。加えて、オーバーラップを強調した映像も目にとまる。視覚情報を増やし、娯楽性を強めることで映画の趣旨が大きく変わっていた。そういう点からこの映画にはシリアスさは不要なのだろう。『危険的青春』は映画の始まりと終わりのメリハリがはっきりとしていて、映画を観賞した後に余韻が残る、掘り下げれば掘り下げるほど面白い映画だった。これは余談だが、魁元は若い頃のドニー・イェンに少し似ている。個人的な意見だが。

溢れでる若者の活力と風俗産業の闇に権力者が絡む、時代のエネルギー充満する逸品。

若い娘は男のため金のため翁の愛人になるし、男は男で諸々クズい所業に出るのだけれど、放埒の底にみてとれる実直さや情景描写の瑞々しさゆえなのか、観ていて心がザラつかない。