ビンさん

断捨離パラダイスのビンさんのレビュー・感想・評価

断捨離パラダイス(2022年製作の映画)
3.8
シアターセブンにて鑑賞。

やっぱり劇場で観る予告編ほど、重要な情報源はないな、と実感する。
本作の場合も、ああ、いわゆる掃除屋さんの映画なんだな、というファースト・インプレッションの他、特に知ってる俳優さんも出ておられないな、あ、泉谷しげるさんが出てるな、くらいなもので。
しかも、上映されたシアターセブンでいえば、たいていの邦画なら、なんらかの舞台挨拶もあろうものを、本作についてはまったくない(笑)

でも、予告編を観た際に妙に心に引っかかるものがあって、今回観に行ったわけだが、実際に本編を観たら予想以上にいい映画に出会うことができ、今はとっても満足である。

ピアニストの律希(篠田諒)は、ストレスからか突然ピアノが弾けなくなり、ピアニストを引退してしまう。
が、自宅で子供たちにピアノを教えると同時に、ふと見かけたチラシの広告が気になっていた。

その広告とは「断捨離パラダイス」。
いわゆる清掃業で、社長の市木(北山雅康)はお調子者でかなりくだけた印象の人物だが、面接に行った律希は即日採用される。

映画は律希が「断捨離パラダイス」で仕事をこなしていく中で、関わった断捨離の仕事をオムニバス形式で描きつつ、律希自身が前向きになっていく姿を、時にコミカルに、時にシリアスに描いていく。

特に印象深かったのは、泉谷しげる演じる偏屈ジジイのゴミ屋敷のエピソードと、武藤十夢(え〜け〜べ〜の元メンバーの方なのか。アンチ秋元康なもんで、この美人の女優、誰だろう?と)演じる片付けできない小学校教師のエピソード。

他のエピソードも含めいずれもコミカルな中に、妙に胸に刺さる部分もあって。
また演出も不思議な間(コミカルな部分でも、独特な間があって、これは少なくとも関西のノリじゃないな、と)であったり空気感があって、思わず観入ってしまった。

監督・脚本を担当された萱野孝幸氏の名前は初めて見るが、福岡出身の監督とのこと。
劇中、関西弁ともとれる不思議な言い回しをするキャラがいて、あれ? そもそもこの映画の舞台って、東京じゃないな、何処だろう、と思いつつ、エンド・クレジットでようやく判明(笑)

オムニバス形式ではあるが、それぞれのエピソードが他のエピソードにも関連していたりして、その構成も実にユニークだった。

パンフ等々の販売もなかったので、萱野監督や演者さんたちの詳細が判らなかった(武藤十夢さん含め)が、その分まっさらな状態で本作と対峙できたのは、むしろ良かったかもしれない。

エンドクレジット後にも短いエピソードがあって、これも含めて愛すべきヒューマン・コメディの良作だった。
ビンさん

ビンさん