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渇水のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

渇水(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

水道の給水停止を行う、水道局員の話。

物語的には、ライフラインである水を断ち切る水道局員の葛藤や、水を止められてしまった貧困家庭の姉妹が描かれます。
水道料金の滞納者の家を訪問する仕事というのが興味深かったし、「もしも水を止められたら、どうなるのだろう?」と考えさせられるものがありました。

ただ、ちょっと不満だったのは、水を止められて以降の姉妹の生活が描かれない点。
水がないと、日常生活のあらゆる場面で不便があるだろうし、そうした不便を描く事で、給水停止の是非を考えたり、姉妹への感情移入も促せたと思うんですよ。
姉妹が公園から水を調達する姿は描かれますが、だったら、その少ない水を節約しながら使う姿を描いて欲しかったです。

ラストは主人公家族の再生が描かれるなど、作り手としてはヒューマンドラマを見せたかったのでしょうが、個人的には問題提起的な部分を期待していたので、ちょっと肩透かしだったかなと。
例えば、給水停止した事で起こる悲劇を描くなり、逆に滞納者への訪問があった事で救われる人を描いても良かった。

水道局員の仕事や、水道というインフラについて考える事は、水道事業が民営化されていく今こそ必要なもので、実際、本作の様な滞納者を訪問する職員は減らされているんだとか。
原作は30年前の作品で、映画は1年前の作品ですが、現実はどんどん悪くなっていくばかり。
本作が悪い作品だとは思いませんが、より社会派で骨太な作品の登場にも期待したいところです。
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