rage30

穴のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

(1960年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

実際にあった脱獄事件を描いた作品。

所謂、脱獄モノの映画ですが、余計な人間ドラマ等は省き、脱獄のプロセスを淡々と描いていく作りが特徴的な作品と言えるでしょう。

脱獄映画の醍醐味と言えば、脱獄に向けてのセットアップだと思うのですが、本作は小道具等のディティールがしっかり描かれていて面白かったですね。
鏡と歯ブラシを組み合わせて偵察用の鏡にしたり、折り畳みベッドの一部をつるはしに使ったり、小ビンと砂を利用して砂時計を作ったりと、お手製の道具が沢山登場します。
それらのアイディアには感心させられると同時に、1つずつステージをクリアしていく、ゲーム的な面白さがあって、非常にワクワクさせられるものがありました。

一方、ちょっと物足りなく感じたのは、もっとサスペンス要素があっても良かったかなと。
「看守にバレそう!」「思わぬアクシデントが!」といったピンチに陥る場面が少ないので、脱獄映画にしてはスリルを感じる事が少なかった様に思います。
まぁ、逆に言うと、「脱獄に集中して見たい!」という人には丁度良いのだろうし、わりと順調に進むからこそ、ラストのどんでん返しがよりショッキングに感じられるのかもしれません。

脱獄自体はほとんど成功していた様なものなので、そこに対する心残りはないものの、囚人とは思えない程に仲の良かった、彼らの関係が壊れる瞬間を見るのは悲しいものがありました。
ガスパルの選択は法的には正しいのだろうけど、一方で人間的には最低な選択だとも思うし、仲間を裏切った不名誉を彼は一生背負い続ける事になるのでしょうね。

古いモノクロの映画だし、2時間以上もあるしで、そこまで期待はしてなかったのですが、見始めたらグイグイのめり込んでいったし、時間もほとんど気にせずに最後まで見る事が出来ました。
『穴』というタイトルの通り、シンプル且つストイックな脱獄映画の傑作として、オススメ出来る作品です。
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