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エルム街の悪夢の消費者のレビュー・感想・評価

エルム街の悪夢(1984年製作の映画)
3.8
・ジャンル
スラッシャー/サイコロジカルホラー/ダークファンタジー

・あらすじ
ある晩、奇妙な悪夢に襲われた女子高生ティナ
それは異様な姿をした男に殺されかけるという物だった
手に付けられた鋭い鉤爪、赤と緑のセーター、焼け爛れた顔…
強い恐怖を覚えた彼女は母が留守という事もあり友人であるカップル、ナンシーとグレンを家に招く
そこで彼女はナンシーもまた全く同じ男の夢を見ていた事を知る
そしてその晩、眠りに付くと悪夢は再びティナを襲い生々しい傷と共に殺されてしまう
後から合流した彼女の恋人ロッドも同室にいた事から犯人と疑われたがやがて留置所で死亡…
その間も夢の中で殺人鬼“フレディ”に襲われ続けていたナンシーは眠る事に強い恐怖を抱く様になっていく
果たして彼は何者なのか?
残されたナンシーとグレンは生き延びる事が出来るのか?

・感想
多数の名作ホラーを世に送り出してきたウェス・クレイヴン監督の代表作の1つで言わずと知れた夢に現れる殺人鬼フレディ・クルーガーを描いたシリーズの1作目
主人公ナンシーの恋人グレン役であるジョニー・デップのデビュー作でもある
同監督が手掛けた「スクリーム」シリーズでのパロディの予習を兼ねて鑑賞

後に対決する作品も製作された「13日の金曜日」のジェイソン・ヴォーヒーズと双璧を成す世界的に有名な殺人鬼フレディ・クルーガー
焼け爛れた肌、ハット、鉤爪、赤と緑のセーターというアイコニックなビジュアルはホラー/スラッシャーを観ない人でも知っているはず
そんなキャラクターのルーツである作品なので期待して観たものの正直に言うと良くも悪くも80年代スラッシャーらしい大味さが目立ったかな…

若い男女の悪夢に現れ殺戮を繰り広げ現実でも死亡する
その設定を活かした現実と夢がシームレスに描かれる様や夢ならではの現実離れした演出等は良い
メインの標的であろう最初の犠牲者ティナと主人公ナンシーがそれぞれ父親と疎遠な事
ナンシーの処女性と対照的に肉欲を象徴した死後のティナの姿
これらの映像表現もまぁ悪くないしゴア描写のバリエーションやストーリーの進行と共に増していく過激さなども印象的だった
じゃあ何が欠けているか?と言うとそれは眠る事への恐怖の描写

今、自分が起きているのか寝ているのかが不明になったり目覚まし時計で強制的に起きたりという演出は良い
しかし劇中で7日間も眠っていないと言及していたのにも関わらず不眠がもたらす影響がまるで描写されていないというのはどうなんだろう…
幻覚や意識が朦朧としたり判断能力が落ちたりという身体的影響が見られたらもっと恐ろしさが増していたと思うだけにそこだけが勿体無いな、と
更に言えば話を信じてもらえない孤独ももう少し描いて欲しかったし…
逆にこれら以外は長年人気を保っているシリーズの1作目だけあって好きだったんだけども

本作序盤でフレディの名がまだ明らかになっていない時、彼は“ブギーマン”と呼ばれていた
ブギーマンと言えば子供を早く寝かせる為に作られたお伽話上の存在であり、「ハロウィン」シリーズにおけるマイケル・マイヤーズの別名でもある
そして虚実の狭間に存在するという特性は「イット」のペニーワイズを思い出させる
この2人に共通するのはお伽話を逆手に取って夜を恐ろしい物としている点でフレディもそれは同様
それもあって上記2作の様な繊細なドラマ性を求めてしまったのが良くなかったのかなぁ…
とはいえ身体破壊もティナ殺害時以外は物足りなかったし…
そんな風にモヤモヤが解消出来ないまま観終える事になったのがとにかく惜しい
母親が台詞で正体を全て説明しちゃったのも何かね…

本シリーズは「フレディVSジェイソン」とリメイク版を除いて7作あるという事でとりあえず気長に観ていくしかないかな…
設定と演出が知られてからは工夫も凝らされているだろうしとりあえず次作以降に期待
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