2022年 監督:吉野耕平 脚本:政池洋佑
原作:辻村深月 2022.10.09視聴ー456
●吉岡里帆(斎藤)
●中村倫也(王子)
●柄本佑(行城)
●尾野真知子(有科)
辻村深月の原作小説は読んでいない。その存在すら知らなかった。
映画予告を観て、これは面白いのではないかと思っていたが、結局今日まで観れなかった。
今日U-NEXT配信を知って、早速観る事にした。
同じクールで放送されるアニメ製作者達がハケンを争う話であるが、断片的に映されるアニメそのものもストーリーがわかるように描かれてあり、二重に楽しませてくれる。もちろんアニメ制作工程現場がどういうものかも描かれてあり興味深い。
ハケンは「派遣」ではなくて「覇権」だ。
つまり同じクールの中でトップに立つアニメ、それがハケンアニメだ。
主人公斎藤監督がアニメの世界に入るきっかけを作ってくれたのは、競争相手の天才監督王子。
新人監督であるだけに自分の作品を思い描くために、多くのスタッフと軋轢ができる。そして苦悩する。彼女を支えるのは密かに彼女才能をかっている行城プロデューサー。
前半この行城プロデューサーに散々憎らしいことを言われるが、ラスト近くになると、彼がどういう人物で、仕事に対する姿勢は、何もかわないことがわかってくる。そこに彼女の成長が窺える。
一方の王子監督も天才と言われながら、実は自分の才能に自信はもてず苦悩している。そして彼を支える有科プロデューサーは、彼に最高の仕事をさせたいと奔走する。
この2組のカップルを中心に、彼らを取り巻く人たちの仕事に対する考え方がこの短い時間の中で丁寧に描いてあって、仕事に対する姿勢に共感する。
脚本がいいと思う。つまり原作がいいということになるだろう。
面白いストーリー展開だし、セリフの一つ一つが非常にいい。それぞれの人物が何を考え、何をしたいのか、何を主張したいのかよくわかるし、生き生きと描かれている。
吉岡里帆はあまり好きな女優でないし、まともに彼女のドラマも観たことが無かったが、演技のうまさに驚いた。
セリフが非常に聴きやすく、セリフ一つ一つに説得力がある。相当、この台本を読み込んでいると思う。
映画の中で、監督として主人公の声優に繰り返しダメ出しをして、とうとう最後には泣かせてしまうというシーンがあるが、この映画制作の現場では、自分が言われている役者として、この声優の気持ちになってセリフを考えたのではないだろうか。非常にいい演技に好感をもてた。