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鬼平犯科帳 血闘のkojikojiのレビュー・感想・評価

鬼平犯科帳 血闘(2024年製作の映画)
3.8
No.1689

 一家全員を惨殺する強盗事件が起きる。長谷川平蔵が火付盗賊改に就任してから、なぜかそんな事件が増えた。
 今度の事件も血塗りの「おに平」の文字が残されていて、何やら鬼平に恨みをもつ者の犯行のように思える。
 ある日、平蔵の元へ、本所のてつ時代に妹のように可愛いがっていた「おまさ」(中村ゆり)が訪ねてくる。
 おまさは平蔵に平蔵の密偵(いぬ)なりたいと言うのだ。

 テレビドラマ「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」の続編である。したがって、この映画を観るまえに第1作のテレビドラマを観ておいた方がいい。

 新シリーズの鬼平はご存知松本幸四郎が演じる。初代平蔵も松本幸四郎(祖父)が演じた。しかしこのシリーズを不動のものにしたのはなんと言っても先代の平蔵、中村吉右衛門(伯父)だ。
 今回の平蔵は明らかに先代の吉右衛門の平蔵を「リスペクト」している。つまり真似ている。

 この「リスペクト」と言う言葉は、私のフォロワーさんのpierさんが使われていて、すごく感心した言葉だ。「真似」ではなくて「リスペクト」なのだ。幸四郎にとってもありがたい言葉だろう。

 リスペクトをするだけあって確かに似ている。第1話のテレビ版ではその真似に少し違和感があったが、今回は観ている方が慣れたのか、割とすんなり観れた。

 しかし、やはり吉右衛門には敵わないと改めて思った。何が足りないのだろう?
それは色気に違いない。
「色気」が足りない、「粋」を感じない。
そのため、若い頃はずいぶん遊んだと言うセリフに納得感がないのだ。
吉右衛門の平蔵は色気があって、「粋」だった。
しかし今回の幸四郎がダメだとは思はない。よく頑張っていて、これからがすごく楽しみだ。

「おまさ」の中村ゆりはどうだろう。
残念ながら梶芽衣子にはやはり及ばない。
盗賊の娘で裏の仕事を散々してきたという影の部分が感じられない。その辺りの町娘の感じしかしないのだ。けれどこちらもまた楽しみな配役ではある。

 本所のてつ時代を演じる息子市川染五郎も清々しくていいし、彦十役(火野正平)もしっかり脇を固めてくれている。彼の演技は安心して見ていられる。
 そんな中で、この映画の一人働きの盗賊、鷺原の九平(柄本明)は頭抜けて素晴らしい。演技に惚れ惚れする。上手いなあと思う。
 その彼が作る「イモ酒」と「イモなます」はこの映画の重要な脇役だ。めちゃくちゃ美味しそうだった。

 ただ一つだけ残念なことがある。
「鬼平犯科帳」のエンディングテーマ『インスピレイション』が流れなかったこと。新しい幕開けなのはわかるのだが、最後の最後にこの曲を少しだけも入れて欲しかった。
そうすればファンは痺れて帰路につけた。耳の中のギターに音色に浸りながら。

 とは言うものの十分楽しめた。
映画とドラマを併用しながら、新しい鬼平を盛り上げて欲しい。スタッフを応援したい。時代劇頑張れ!
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