ハヤメソソ

私だけ聴こえるのハヤメソソのレビュー・感想・評価

私だけ聴こえる(2022年製作の映画)
4.0
今年の上半期ベスト1と言っても過言ではない「Coda あいのうた」を見て初めて知った、壟者を親に持つ聞こえる子どもという意味であるCoda。

前者の劇映画は、自分の夢と家族との間で板挟みになる子ども(Coda)の生き方が優しい目線で細かく描かれていて秀作と感じましたが、今回このドキュメンタリーでは、Codaの子供たちがいかに居場所がなく、自分のアイデンティティを見いだせずに苦悩しているかという点に絞り、丁寧に描写しています。

この作品で描かれた視点は、やはり聴者の私にはとうてい考えが及ばない点で、ある意味ショックを受けました。
自分が壟者のコミュニティと関わりがあるかと聞かれたら、無いですし身内や親戚、友人に至っても一人も存在しません。
これが私の世界です。
いったい何が分かるのか、分かったような気になっているのかと、大反省でした。

思春期の子らが、あんなに悩み、唯一コーダキャンプの時だけ生き生きとしていられる。
関わりがないにしても、その辛さがわかった気がします。

例えていうなら、日本に移住してきた外国の親が日本で子を持ち、親は日本語が話せず小さい子どもが通訳をせざるを得ない状況だとか、その子が将来日本人との間に子を持ったときに、親の母国語を教えない限り、両親は孫と話すコミュニケーションができないことになる…という問題を思い起こさせました。

人種、性別、障害、政治、宗教etc.…
分断は様々なことで引き起こされています。
簡単な問題ではないだけに、今すぐどうすることもできない現状に消化不良の思いです。
でも、これって今に始まった問題じゃなく、何十年もいや何百年も前からあった問題ですよね。
今までどうにもなっていないことがもどかしいです。
当事者にならないと思考すらしない、多くの善人の一人にならないように。