私ごとで恐縮ですが、これが区切りの1,100本目のレビューということで、大好きなアクション映画であると同時に、最悪で最高のクリスマス映画でもあるこの作品を😊
初めて観たのは公開時の1989年、世の中まだバブル景気の真っ只中で、アメリカ🇺🇸が本気で日本経済🇯🇵を恐れてた、今は昔の物語😅
とにかくこの映画は、面白かった。そして見事に大ヒットした。改めて観てみるとヒットするのも当然の〝映画を面白くする要素〟が詰まった映画だった。
まず第1に、映画としての掴みが素晴らしい。「ダイ・ハード」と言えば主人公のジョン・マクレーンが裸足でガラスの上を走り回る痛々しいシーンが思い浮かぶが、何と開始1分でそのシーンを暗示する会話が出てくる(覚えてるかな😊)。ヒーローにハンデを負わせることになる見事な前振りだ。
更に立て続けに、彼がニューヨークの刑事である事や今日がクリスマスイヴ🎄であり、家族と会う為に戻ってきたことも冒頭の飛行機✈️の中で語られる。ここまで開始からわずか5分。この手際の良い演出に感心してたところで、これ見よがしに〝監督:ジョン・マクティアナン〟のクレジットが登場するという完璧なオープニング😊
第2に主役・悪役・脇役のキャスティングが見事。本作は、みんな大好き〝勧善懲悪のアクション映画〟なのだが、主人公がこれまでのアメリカ映画のヒーローとは、全く違うタイプだったのだ‼︎
アクション映画が大好きな私にとって最初のヒーローは、何と言っても「燃えよドラゴン」のブルース・リー。その後も筋骨隆々のシルヴェスタ・スタローンからアーノルド・シュワルツェネッガーへとアクション映画の王道を歩んでいた。
そんな私にとって、ブルース・ウィリスが演じた、ブツブツ文句を呟く〝中肉中背で薄毛のおじさん〟は、およそヒーローのイメージとはかけ離れた存在だった。
だが、いざ映画が始まると、この〝一見頼りなさげな中年刑事〟が、どんどん魅力的に思えてくる。
それもそのはず、これまでのアクションヒーロー達は、鍛えられた肉体やアクションは一流だったが、演技の方は…😅
その点、こちらのヒーローは肉体はともかくユーモアや演技の方は一流だ。
ブルース・ウィリスはテレビドラマの「こちらブルームーン探偵社」で名前こそ知ってはいたが、全くノーマークの役者だった。それが本作をきっかけに、とんでもない大ブレイクを果たし、たちまちスーパースターに上り詰めた😊
更に犯行グループの冷静沈着なリーダー、ハンスを演じたアラン・リックマンの悪役ぶりも見事であった。今年話題になった「地面師たち」の指示役、ハリソン山中(豊川悦司)に言わせれば、この映画が面白いのは、彼の悪役としての功績によるものだと断言していたほど😅
第3に綿密に計算された脚本が見事。相棒となる黒人警官パウエルやマクレーンの妻ホリーだけでなく、嫌味なテレビ局のレポーターや陽気なリムジンの運転手、個性的な犯人側のメンバーにFBI捜査官のジョンソン&ジョンソン(笑)まで、登場人物それぞれにキャラクターをつけた上に見せ場まで用意するという巧みな演出。
これだけ多彩な登場人物がいる話を、ひとつのストーリーにまとめ上げ、なおかつ前半の伏線を後半、次々に回収していく手腕はさすがだ。
第4に音楽の使い方も洒落ている。本作はクリスマスソング🎄で始まり、クリスマスソング🎅で終わるのだが、マクレーンが空港からリムジンで舞台となる日系企業の高層ビルに向かう中、運転手がBGMにかけたのはクリスマスソングではなく、激しいラップミュージック。穏やかなクリスマスイヴにはならない事を予見している😅
更に秀逸なのは、終盤で犯人グループの仕掛けた罠にFBIがまんまとハマった瞬間に流れる、ベートーヴェンの交響曲第9番。おそらく映画史上最も皮肉なタイミングで鳴り響く〝喜びの歌〟ではないだろうか?
まさかこの曲を主人公側ではなく、犯人側の心理で使うとは😅
この映画が、これまでのアクション映画と大きく違うのは、主人公と犯人グループの戦いは銃撃戦や肉弾戦なのだが、ラスボスであるリーダー、ハンスとの戦いは互いが頭を使った、心理戦になっているとこだ。
「地面師たち」でも語られていたラストの転落シーンは余りにも有名だが、それ以上に気に入っているのが、中盤で2人が偶然バッタリと出くわすところだ。ここでのお互いの駆け引きは、一瞬たりとも目が離せない名場面だ。
その他にも消防ホースぐるぐる巻きや、奥さんホリーの強烈パンチ、そしてホッとしたところでのもう一波乱など記憶に残る名シーンの数々。
まさにアクション映画の流れを変えたエポックメイキングな作品であり、ブルース・ウィリスという新たな中年スターを誕生させた大傑作。
毎年クリスマスシーズンが近づくと思い出す、ヒーローになんかなりたくなかった〝なかなか死なない男〟の奮戦記。
〈ネタバレ気味の余談ですが〉
大好きなシリーズで1〜3まではDVDも所有している。余りにも好きなので、その昔原作小説も読んだのだが、これが驚くほど映画にそっくり!いや、映画はこの原作小説を忠実に再現している、と言った方が正確だろう。
全体としてはパニック映画の傑作「タワーリングインフェルノ」にインスパイアされており、映画も後半の爆破シーンからの脱出場面は、その映画を彷彿させる。
また、パーティー中での事件勃発という設定は、竣工パーティー中の「タワーリングインフェルノ」や豪華客船内での年越しパーティー中の「ポセイドン・アドベンチャー」にも共通している。
小説での主人公の年齢は、もう少し高めの設定だが、映画の名場面として描かれている、素足でガラスの上を走る描写や屋上からホースぐるぐる巻きで飛び降りるシーン、更に後半で犯人と対決し武器を隠し持つ場所まで、全部原作に書いてあるのだ。
ただしラストだけは映画と大きく異なり悲劇的なのだが、個人的にはハッピーエンドの映画の方が断然好み😊
〈どうでもいい余談ですが〉
この映画の悪役は言うまでもなくビルを占拠したテロリストを装ったヨーロッパ系の強盗集団なのだが、映画を通してそこはかとなく漂うのが、日本に対しての非常にうっすらとした嫌悪感だ。
表立って描かれてはいないが、1980年代の日本は、ジャパンマネーの力でアメリカの企業を買収したり、土地やビルを買い漁り、街中には日本の車や電化製品が溢れていた。
本作でも日本企業が建てたビルが舞台となり、日本人経営者がアメリカ人の従業員を雇っているという設定だ。
今ではアメリカ人にとって日本は、物価も安く食べ物が美味しくて、安全で清潔な観光地であり、アニメやゲーム、スポーツを通じて友好的な関係を築けている様に感じられる。
それはとても素晴らしいことなのだが、果たしてこの状況を素直に喜んでいいのかどうか😅