サムカワ

百花のサムカワのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
4.0
試写会@ 東宝試写室にて
一足早く観させていただきました!

上映後の川村元気監督とスタイリストの伊賀大介さんのティーチインを経ると
「え!今すぐもう一回観たいんですけど!?」となるくらい、画面の隅々まで、映画の端々にまで意図や計算が施されている作品でした。

『ファーザー』『選ばなかったみち』などで主流化しつつある?アルツハイマーの方の主観映像的な表現がいきなり繰り出されるオープニングで
「あ、これは相当な作品だぞ…」と襟を正し、そして目を皿のようにしてスクリーンからの情報を拾うぞ!と前のめりになりました。


ワンシーンワンカットや、被写界深度の浅い撮影、突飛な編集と、
けっこうアートチックな、ともすると難解めな作品になりそうな要素で構成されていながら、
おそらく本作の物語を理解できない人は1人もいないのでは…?と思うほどに、とっつきやすくわかりやすい娯楽性もしっかり兼ね備えている巧さに驚きました。


そして、そのとっつきやすさの先に周到に計算された様々な演出が潜んでいて、一度の鑑賞では満足できない奥深さもあるなんて…。


あまり他の日本映画にはない質感をもった作品だなぁという印象もありました。

そして撮影が本当に美しいなぁと思った日本映画はやはり今村圭佑さん!!
湖畔の花火のシーンとか、あの規模感どう撮ってるんだろう…。


アルツハイマーを扱った作品ですが「みんな記憶は覚えてるものもあれば忘れるものもある」と、非常にフラットな視点を持った着地にもグッときたし、
事前の予想に反して清々しい気持ちでシアターを後にできたことも嬉しい誤算でした。


すぐにもう一度観たいし、何年か経ったらまた見返したりするだろう作品ではありますが、
ただあまりにも計算が行き届きすぎて、こちらも「その意図を拾うぞ!」と腕まくりをしてしまったため、
全体的に「よくできた作品」の"よくできた"な人工物感が前に出てきてると感じ、登場人物の生きた気持ちにのめり込むことはできなかったです。


深く掘り進めてゆくと、突飛で奇怪、稀な作品としての魅力に惹きつけられますが、
これをもし配信等でサラリと見たら、口当たりの良い…けど、過ぎ去っていってしまう作品にもなってしまいかねないので、集中できる環境、劇場鑑賞マストな作品だなと思いました。
サムカワ

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