サムカワ

ミッシングのサムカワのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.8
やっぱり𠮷田恵輔監督は人間を描くのが意地悪なほどに上手いですよね。。

観終わって今、感じたことのな疲労感でいっぱいだし、映画のどのシーンを思い起こしても胸がぐりっと痛くなる。

単純に映画の「面白さ」で言えば、同じくゲキ重方向の𠮷田作品だと『空白』の方が上な気がするんです。展開の数とか。

でも、そんな定量的なもんじゃなくて、なんかこう…ね……。

𠮷田作品は毎回そうだけど、やっぱり画面に映るすべての人々が、僕が実際に会ったことあるような人たちばっかりなんですよね。実在感や存在感が。
あのピリピリとした会話も、シリアスななかでフッと湧き出しちゃう笑いも、全部身に覚えがある。

もちろん本作の発端となる子どもの失踪は、僕は経験したことはありません。でもそれを受ける人々の機微はあまりにも生々しくて…。

石原さとみの演技は、もう形容し難い領域に行っていて怖いと感じるくらい。

芸達者な方々ばかりですが、特に(佐々木こと)細川岳さんがすごいですよね。
あの軽さ、マジでリアル。
ちょうど僕も「ん?THE 虎舞竜」と思った瞬間にあのセリフ…ズルい。

僕は映画の上映時間は短い方が良いと思っている人間ですが、本作で数少ない劇伴が流れて綺麗なモンタージュが流れ始める度に「頼む、このまま映画を終わらせないでくれ、今終わられたら辛すぎるって!」と心の中で懇願してしまうほど、主人公夫婦に感情移入していました。

中村倫也さん演じる砂田さんの葛藤も、青木崇高さん演じる旦那さんの苦しみも、全部がダイレクトに刺さって抜けなくなる。

ベタな表現ですが、本当に観終わって劇場を出ると、道ゆく人々がそれまでと違って見えてくるんです。

凄まじい映画でした。

余談ですが、観ている間、なぜかこれまで僕を馬鹿にしてきた人たちの言葉や顔がドドドっとフラッシュバックしてきて、ものすごく辛い気持ちになりました…なんで今!?っていう。
サムカワ

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