サムカワ

関心領域のサムカワのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.3
設定も話の構造も狙いも、事前に知り得てる範囲を越えてこないけど、
それでもやはり百聞は一見にしかずで、実際にこの状況を映画として観ると、なんとも不快。
汽車がやってくる黒煙や川を流れる骨。執拗に洗い流す灰。聞こえる声や音。
これまで教科書でも本でも映像でも、繰り返し見てきたあの光景がありありと脳裏に浮かびます。

予想の範疇を越えないとは言ったものの
終盤まさしく『ヒトラーのための虐殺会議』で観たものと同じくだりから、ルドルフのえずき、そしてそこに急に差し込まれる映像。
あれには予想していなかったショックを感じました。
映画の中の話じゃない。現実の出来事で今なおこの世界にはあの場所はある。知ってはいるけど…その「知ってはいるけど」と関心の外に持っていこうとするな!!!と引き戻される感覚。

今だってガザなどにいるパレスチナの人々は虐殺に苦しんでいて、それを我々は知っているし、情報を見聞きすることは塀の向こうを覗くように簡単なはず。なのに関心領域の外にするのか?と。

映画が終わって劇場が明るくなるやいなや、横にいた20代くらいの男の子2人組が「何が伝えたいのか1ミリもわからなかった」とヘラヘラ笑って話していて…
この作品の良し悪しの評価は人それぞれあると思うし、受け取り方の濃淡はあると思うんですが、何を伝えたいかは明白じゃないですか。
それくらいは受け取れよ!!!
まさにお前らの関心領域の話をしてんだよ!!!!
と勝手に怒りや絶望、呆れが沸き上がってきて、こんな人がいるようでは、繰り返し繰り返しこういった映画が作られ、公開される必要はまだまだあるよな。と思いました。
サムカワ

サムカワ