Fujisan

百花のFujisanのレビュー・感想・評価

百花(2022年製作の映画)
3.0
泣いた。
認知症の症状を持つ母親の気持ちになれた。脳の中に残る記憶の残像が、切れ切れに現れてくる様が言葉になっていく。
その段階で、初めて親子の絆は本物だったか否かが判るのかもしれない。

「ねえ、お母さんアレ覚えてる?」
認知症の母を持つ親子の会話は、悲しいか?楽しいか?…
親子の絆がはっきりする瞬間。
例えば母の頭の中を抽象的に表現するならば、モヤの様な不透明な白の世界の中に、残像が見え隠れし、時々はっきり見えたり消えたり…時々見えた時に、はっきりとした固有名詞を繋げてあげられる親子関係は、素晴らしい。

そして、余計な記憶が忘れられて美しい記憶だけが残っていくという事は、お釈迦様ような心により近づけていることなのかもしれないねと囁いて笑い合う。

そんな風に、最早、親子というよりは、人間として相手の立場に立てる器を持つと言うことの大切さを描かれていた。
何故ならば、人間は結局1人で産まれてきて1人で死ぬからだ。

そんな人生の中で、どんな事をされようとも、想い出があるという事に感謝をしなければならないんだとこの映画は言っているような気がした。
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