いつもいっちゃん

VORTEX ヴォルテックスのいつもいっちゃんのレビュー・感想・評価

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
5.0
日本公開を待ち望んだギャスパー・ノエ監督最新作。
「CLIMAX」「ルクス・エテルナ 永遠の光」といい、近年怪作を生み出したノエ監督が描くのは老夫婦の終末。
148分間、ほぼ2面分割の映像で最初目がおかしくなるのを心配しましたが、これがまさかの意図に感服。

心臓に病を抱えた夫と認知症の妻。
お互いに爆弾を抱えたが如く、日常生活に暗雲が立ち込める。
2面分割された映像に映し出されるのは生活環境、それぞれの表情、それぞれの場所。
並行し映されるのは余すことない真実。
とてもリアルで生々しい。
愛が語られる冒頭から、一気にホラーへと変貌する。
老夫婦の静かな終焉が地獄絵図の様に展開する。
老夫婦の息子も登場するのだが、また裏の顔もあったり。
夫は物書きということもありまだまだ現役。
故に忘れゆく妻とはまた別の世界にいる。
並行していく別々の世界が強調されていく中、夫婦であれど死ぬ時は1人で死んでいく。
人が居なくなることの虚無感を衝撃的に表現されていた。
何より生活感がある描写が多い為、ラストに残された物が映し出され、処分されていくショットはリアリティがある。
僕自身が祖父母を亡くした後、親の家内整理を見ていたりしたので、より身近に感じました。
愛ではどうにも避けられない運命を描写、表情の数々で心抉ってくる傑作。
濃密な148分。
ダリオ・アルジェント、凄い鬼気迫る演技をするな、、、
ギャスパー・ノエ、最高傑作と謳われるのも納得。
いつもの暴力、セックスの強烈な作風から新たな引き出しがあった!
そして更にノエ監督、好きになりました。