喪黒もぐちゃん

VORTEX ヴォルテックスの喪黒もぐちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

今まで観た映画の中で一番怖い映画かもしれない。

心臓が壊れるか、脳が壊れるか。
そしてそれ以上に『老い』によって、自分のことなのに自分でコントロールできない恐怖。

夫は心臓を患いつつ、いつ完成するのか、それとも"やってる感"を出してるだけで実際に完成させる気はないのか、よく分からない『映画と夢』に関する本の執筆活動の傍ら、愛人に一時的な安息を求めて逃げようとする。
妻は認知症を患い、自身の不可解な行動にすら自覚を持てず、ふとした瞬間に『普通のふりをしなきゃ』と言い聞かせて、大量の薬物を砕いてグラスに入れたり、夫が書いた大切な原稿をビリビリに破ってトイレに流して「片付けしておいたわよ〜」と、日常の家事のように涼しい顔で過ごしていく。
一人息子が諭してくるも、余計なプライドが邪魔をしてグループホームにも入りたがらない。
そんな一人息子も、やっと薬物中毒の治療が効いたかと思いきやまだ悪友と繋がっていて、薬物中毒はまだ治らず。

先の見えない地獄のような日常を、ただただ過ごしていく。
これからどこに向かうのか。
やがて訪れる死。

大量の本や雑貨に囲まれ、夫婦の思い出が沢山の詰まった家も、当人らが居なくなれば、まるで最初から誰も居なかったようにまっさらな空き家となり、すべてが消える。

ギャスパーノエが辿り着いた人間の極地。