ギャスパーノエと聴いて。
wild bunch INTERNATIONAL
【うず】
まずこの映画を見たみなさん。お疲れ様です。不快というわけではないですが、非常に精神的に妙な傷を残す映画なので、ケアを忘れずに。私のように今作についてコーヒー飲みながらスターバックスで考え込むのは一旦置いておいて、あったかいうどんでも食べてお腹と心を満たしてください。そしてあったかい布団で寝てください。
いまの家族の永久的な問題だと思う。母親は認知症施設で働いているが、曰く私が認知症になったら殺してくれという。
動物か、人間か、その違いは知性なのか。
妻と夫が手を握り合うシーンや、息子が母の枕で眠るシーンなどは、そうした知性などを越えて、私たちの心へと情感でアクセスしていく感じが好きだった。
「CLIMAX」同様役者任せの長回しを展開。スプリットスクリーンの情報量に慣れてしまえば、冗長なシーンが多く、起伏もないため眠くなってもおかしくなかったが、ずっと集中して見てしまった。
ドSな監督という印象があったけど、描き方が克明すぎるからか。
老いと生を激しく示しては、片面黒いスクリーンで不在感を内在させる。「死」。
呼吸器系疾患になったことがある私としては、かなり何かを思い出すシーンがあった。ちょっとトラウマ仕立て。
パンフレット一気読みした。どう転んでも人生は孤独なのだろうと思った。
昨日暗めの海外ニュースを浴びたせいもあって、どうも物事を肯定的に考えることが難しくなっている。
死や老いや病に対して、何も希望を示さないというのはギャスパーノエのスタイルなのだろうけど、これが何より事実らしくて、克明に刻まれる死も加わって、観客の心に傷を残す。
老いることは、子供に戻ることで、親子3人での会話シーンで息子が繰り広げる話は、「君のためを思って」など度々親の話にも聞こえてきた。つまり息子が親に見えるシーンだった。
良い悪いで語れる映画ではない。こうやって映画の感想を紙に書いても愛する人がトイレに葬るのだから。それが現代的な老いなのだから。問題提起、老いの追体験、それによって現実を直視することになった、ということでこの評価。
ラストの綺麗になった家は、中古住宅に少しだけ関係のある仕事をしている私として、思うところたくさん!