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VORTEX ヴォルテックスのjunjuoneのレビュー・感想・評価

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)
3.9
ギャスパー・ノエの作品は20年前にアレックスを観てあまりに生々しい暴力描写ながら、思わず高評価をつけたのを覚えている。


数年前の映画、ファーザーが認知症患者の目線からのトリッキーな映像体験だったのに対し、本作ではあくまで客観的でリアルに認知症の実態を目の当たりにする。

序盤から、観ながらにして自分の母のことを考えさせられた。
この作品は父の画角と母の画角の2画面を駆使しながらも、めちゃめちゃ目を凝らして2画面の差を追求する必要はないので、他のこと考えながらの観方もありだと思った。

若い時の母が息子の机にションベン撒いたり、家庭内とはいえ人の所有物を勝手に捨てたりしてたのを思い出した。


金を盗もうとも、ガス出しっぱなしにしようとも、デスクの原稿破いて捨てようとも、嘘をつこうとも、便所を流さなかろうとも、この映画の親子は培った愛があり、両親の死に向かう際での会話は建設的だった。

言うこともやることも認知の崩壊で無感情無思考のような状態で行われたら、まさにこの父が言う通り、俺を殺す気か!と思う所業に感じるのは良くわかる。
病気とはいえ無表情でやられたら、それがあなたの本性か、と一瞬は耐え難い抵抗に苛まれるだろう。。


自分に置き換え、現在70になる母が今後、今度は病気だとしてもますます現実も過去も全部うやむやになってしまうようなこんな状態になったら、ただただはらわた煮え繰り返って正直面倒見きれんわと思ってしまった。自分が恐ろしい。
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