ローレン・ハダウェイ監督作。
『セッション』(2014)等で音響編集を手掛けてきた女性スタッフ:ローレン・ハダウェイの初監督作品で、大学ボート部に入部したヒロインの闘志と狂気の一部始終を描きます。
大学の女子ボート部に入部した物理学専攻のヒロイン:アレックス・ダルが、チームのレギュラーを勝ち取るべく、同じく新入生のライバル:ジェイミー・ブリルとの間で熾烈な争いを繰り広げていく姿を描いた異色の“スポ根+心理スリラー”です。
大学時代における監督の実体験に着想を得て制作された本作は、“No.1”に執着するヒロインの死に物狂いの努力と狂気の発露をつぶさに見つめた異色映画です。通常の青春スポ根物では、ライバルとの切磋琢磨と友情が最終的に爽やかに描かれるのですが、本作では、他人に敗北することが到底受け入れられないヒロインの闘志と妄執が生々しく描写されます。ライバルとの切磋琢磨という生ぬるいものはなく、いかにしてライバルを蹴落とし自分の実力を周囲に認めてもらうかがヒロインの唯一にして最大の関心事であり、チームメイトとの協調やコーチ&上級生への敬意など一切気に掛けないヒロインの独善的な態度は次第に彼女自身を孤立化させていきます。
“負けず嫌い”という可愛げな言葉では済まされない、勝利に対するヒロインの病的執着とその果ての発狂をまざまざと見せつけた気鋭のサイコスリラーで、『エスター』(2009)でエスター役を怪演したイザベル・ファーマンが妄執のヒロインを始終苛烈に演じ切っています。
蛇足)
自分の勝利だけに拘るのであれば、そもそもチームスポーツではなく個人競技を選べばいいのに…。