Jun潤

ピンク・クラウドのJun潤のレビュー・感想・評価

ピンク・クラウド(2021年製作の映画)
3.2
2023.01.31

ポスターを見て気になった作品。
あらすじを見ると、これまた状況は違えどコロナ禍のように理不尽に外出自粛を強いられた人々によるスリラーの様相。
もはやバッドエンドの方が想像に難くないジャンルで、コロナ禍も再び余談を許さない状況になりつつある中、どのような物語を観せてくれるのか。

空に突如として現れたピンク色の雲。
それは、10秒で人間を死に至らしめる謎の現象だった。
一夜の関係のはずだったジョヴァンナとヤーゴは、共同生活を送ることになる。
雲の正体もわからない、ワクチンも作れない。
けれども人の営みは止まらず、物流によって食料は配給され、オンライン上でコミュニケーションは続いていた。
やがて自分の子を望むヤーゴとジョヴァンナは子を成し、家族になっていく。
新しい日常を受け入れ、ジョヴァンナの生活は続いていくかに見えたがー。

まず今作は2017年に脚本が書かれ、2019年に撮影が行われたという。
なので完全にコロナ禍前に考えられた作品。
現実と酷似している状況には皮肉な偶然を感じざるを得ません。
実際、作中のような状況下になっても止まらない物流やニュース番組、ネット配信者。
対面でのコミュニケーションができなくなっても、オンラインで対話を続けるなど、自粛生活がなあなあながらも緩和されてきた昨今においては、もはや懐かしさすら感じる描写も。
物流やニュースに関しても、たまたまロックダウンした時職場や開発環境にいた人がいたのかな?と思った程度でしたね。

しかし時が経ち、ロックダウン生活が一年過ぎたということで祝い出す人々にはなんだか違和感。
コロナはピンクの雲ほど致死性が高かったわけではないので、出勤や外出など早々にし出す人もいた記憶ですが、それでも自粛期間のストレスもまぁあったので、ロックダウン前の生活も知っていて、ロックダウンしたことによる不自由さも感じているはずの人たちが盛大に祝うのはなんだかなという感じです。

また、制限された状況下で歪んだ行動に出る人々というのも、着眼点は良かったと思うのですが、実際ピンクの雲に直面したわけではないので、そこまで?と疑問符。
コロナ前に作ったんだよ〜みたいなのを偶然の一致という作品の要素の一つにしていたようですが、妙にチグハグになっていた印象です。

これならコロナ前に公開していやファンタジーやん!てなった後に実際にコロナ禍になる、という方が観る側としての今作の価値は高まったのかなと思います。
Jun潤

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