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生れてはみたけれどのzoeのレビュー・感想・評価

生れてはみたけれど(1932年製作の映画)
4.3
小津安二郎監督作品初鑑賞です。松田春翠さんによる活弁入りを鑑賞。最後まで観ればこの題名の意味が分かる、現代にも通じる社会の嫌な部分を子供の視点で描いた素晴らしい作品でした。

子供には子供の社会があり、大人には大人の社会がある。

“序列”、なんて嫌な言葉だろう。

生まれた時点である程度の境遇が決まり、親の社会的地位が子供たちの生活にも大きく影響する。子供のうちは気付かないが、その子供たちもいずれはそれに気付き、どうしようもない現実にぶつかる日が来るだろう。 

お父さんは日頃から充分媚びを売る自分を情けないと感じていたかもしれないけど、それを誰かに直接言われるといくら自分の子供が相手でもプライドが傷付いただろう。

この映画を締めくくる以下の松田春翠さんの言葉が全てだと思います。

ところが大人の世界は一度決まった序列は変わることができない。
その大人の序列をそのまま子供の世界にまで強いようとするから子供心に反抗心を燃やすのであります。
重役がなぜ偉いのか、課長の椅子を維持するためにはなぜ重役におべっかを言わなければならないのか、これは子供には理解できないことでありましょう。
さて、我々も一方退いて本来の人間という立場から眺めてみるとやっぱり理解できないことではないでしょうか。
生まれてはみたけれどこのようなこはあまり住みよいところではなさそうであります。
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