ともぞう

生れてはみたけれどのともぞうのレビュー・感想・評価

生れてはみたけれど(1932年製作の映画)
3.4
家では威張っている父親が、会社の上司にはペコペコしている。それが理解できない兄弟が父親に反発する。大人はサラリーマンと階級社会の萌芽、子供はガキ大将と昭和初期の世相を感じさせる。個人的には母親役の吉川満子の一歩引いた昭和のお母さん像に惹かれた。世の矛盾を嘆いた小津安二郎監督のサイレント映画の名作。

〈あらすじ〉
長男の良一(菅原秀雄)と次男の啓二(突貫小僧)の父親、吉井健之介(斎藤達雄)は、重役の岩崎壮平(阪本武)の近くに引っ越して出世のチャンスをうかがっている。だが、兄弟の前では厳格そのもの。引っ越しで転校した兄弟は早速地元の悪ガキグループと喧嘩した揚句、鬱陶しくなって小学校をずる休みするも担任の家庭訪問で知られ、2人は父親から大目玉。そのうち悪ガキ仲間と友達になり一緒に遊ぶようになる。その中には岩崎の子供もいる。ある日、みんなで「うちの父ちゃんが一番えらい」と自慢する話が出る。兄弟も自分の父親が一番えらいと信じて疑わなかったが、ある日、岩崎の家へ行って見せてもらった16ミリ映画の中で、父は岩崎の前でお世辞を言い、動物のまねまでしてご機嫌伺いをしていた。怒った2人は食事も取らず、またしても学校をサボって抗議する。しかし、その抗議も長続きせず母親英子(吉川満子)のとりなしで兄弟は夕食を食べて寝る。父も子供の寝顔を見ながら、家族のためとは言いながら子供を絶望させたことを後悔する。翌朝、いつものように父と兄弟は一緒に家を出るのだった。
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