CHEBUNBUN

勝手にしやがれ 4Kレストア版のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

2.0
【ゴダールは銃を誤魔化す】
2月からずっとジャン=リュック・ゴダールの作品を追っているのだが、原点に戻って『勝手にしやがれ』を観ることにした。中学生の時に観ているのだが、よくわからない印象があった。今回、観直してみるとゴダールのクセが掴めたような気がした。

今回、観て驚いたのは、『鵞鳥湖の夜』がほとんど『勝手にしやがれ』の構図と一緒だということだ。警察を殺して都市部に逃げてきた者の愛と追う/追われるの関係といった構図が奇妙なところで結びついて感動すら覚えた。と同時にゴダールのクセと問題点も浮き彫りになる。詰まるところ、小手先の技術で誤魔化し続ける作品だというところだ。ジャンプカットはもちろん、なんといっても銃アクションの誤魔化しが顕著である。男の運動でもって「撃たれた」を表現しており、遠巻きに撮影することで血糊を塗るといった面倒な演出を回避している。この技法は、後のゴダール映画の中でも頻出のものとなっており、『カラビニエ』における銃殺を横移動によって誤魔化す手法や、『はなればなれに』における銃を撃っても死なない描写に反映されている。ゴダール自身、「映画」が撮れないといったコンプレックスと長年向き合ってきたといえ、その結果、全ての芸術は何かの引用であることを剥き出しにすることによって唯一無二の作家性を勝ち取ったといえる。とはいえ、『鵞鳥湖の夜』を踏まえるとあまりにもアクションやサスペンスを撮ることから逃げているし、その小手先の逃げが評価されているのは過大としか思えない。一方で、その過大評価があったからこそゴダールは『ジャン=リュック・ゴダール 遺言 奇妙な戦争』を生み出すまで活動できたともいえる。なのでどちらにせよ記念碑的作品であることは間違いない。
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