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グリッドマン ユニバースの都部のレビュー・感想・評価

グリッドマン ユニバース(2023年製作の映画)
4.2
集大成と呼ぶに相応しい佳作。
電光超人グリッドマンを原作とするアニメシリーズ『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』のクロスオーバーは人間同士の共鳴、人間関係の進歩、そして悔恨の払拭──それによる新たな成長と有機的な発展的確に果たした上で、力強い創作賛歌へと帰結するメタフィクションとして気持ちの良い作品であるように思う。

盛大な後日談としてTVシリーズから前向きに"変わった"登場人物達の活躍や振る舞いは当然楽しくて、この辺を逐一説明的な下りを挟まずにさりげなく仕込むのが巧みな脚本は目にしていて楽しく、だからこそ二ヶ月の空白と宝多六花に対する未告白に足踏みする主人公 響裕太の物語として厚みのある話にもなっていたのかなと思います。しかしそれをただ1から描くのではなく、『SSSS.GRIDMAN』に見られた上書きされた性格を踏襲した上で、純然たる英雄気質と恋愛にまごつく歳相応な可愛らしさを全面的に見せてキャラクターの良い点を補強するのだったり続編としての立ち回り方が実に見事ですね。彼を初めとして彼に関係する登場人物たちの繊細な心の微動もしっかりと抑えて、2時間尺の人間ドラマとして薄さを感じさせない語り口だったのも周到です。

こと物語に関しては構成にやや問題があり、2時間以内の尺で二作品と今作の新たな問題と中心的課題を処理しているのはたしかに手際は良いのですが、中盤より加速する不穏なる展開の緩急はもう少し欲しいというのが歴然たる事実で物語の進行の淀みのなさに流されてしまったものはあったかなと多々思います。見積もって143分くらいが適切な尺……いや、どうだろうな…………。ともあれ本シリーズのメタフィクション性を通した風通しの良い創作賛歌は大変気持ちがよく、終盤の怒涛の展開は非常に楽しい。これぞヒーローを主体としたコンテンツだと言わんばかりの構成要素の積み方が最高でしたね。コンテンツ全部乗せ!

特撮部分に関してはアニメーションだから成立するカメラアングルや見栄えを限りなく意識した活劇アクションが増えたという所感があり、正確には数を絞って印象的な画を偏執的に連続させることで本シリーズのアニメ1クール分の特撮部分の面白さを二時間に投じている。これは登場人物達の恋愛事情にも同じことが言えて、作品の持つ繊細さと快活な大味が成されているのは2大スタジオによるコラボレーション作品としての旨味を存分に出力出来ていたのではないかと思います。とても面白かった。
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