もちもち

バッドガイズのもちもちのレビュー・感想・評価

バッドガイズ(2022年製作の映画)
5.0

次々と派手な盗みを成功させる泥棒集団バッドガイズ。リーダーのウルフ、相棒で金庫破りのスネーク、変装の達人シャーク、武闘派ピラニア、天才ハッカータランチュラ。伝説の黄金のイルカを盗もうとしたものの、捕まってしまった彼らはマーマレード教授によってグッドガイズに変身させるという実験に付き合うハメに。知事や警察署長の裏もかき、実験に協力的な姿勢を見せながら、黄金のイルカを再度狙う彼らだったが、ウルフは次第に自分の本当の心に気づいていく。ドリームワークス製作の心温まるクライムムービー。100分という短時間に友情や感動のドラマ、善悪やアイデンティティといった道徳性、スパイアクションやカーアクションのエンターテイメントがバランス良くテンポ良く融合されている。悪者が改心して善人になるっていうベタなプロットだけど、テンポが良いしキャラクターの個性も最高、終わりに近づくにつれしっかり盛り上がりがありつつ飽きさせない展開の仕方。基本ポップでコミカルだけど子供だけでなく大人にもしっかり刺さるように作られている。5人のキャラクターはそれぞれ個性的で全員愛おしい。基本はウルフと相棒のスネークをベースに進行していくけど、他の3人もしっかりキャラが立っていて存在感抜群。掛け合いや息の合ったコンビプレーはずっと見てられるし、仲間同士の友情もアツい。特にウルフとスネークのラストには泣きそうになった。変わっていく友人に寂しさを感じたり、逆にそんな変わっていく自分と友人との間に切なさを感じたり。あの辺は大人だからこそ刺さる。そしてそんな衝突もあった上での「愛してるぜ」は心に響く。音楽も映像も全編通してクオリティが高い。特にカーアクションはベイビードライバーやカリオストロの城を参考にしているらしく、凄く印象的。サスペンションやドリフトの煙、疾走感溢れるチェイスシーンは迫力満点で細部までのこだわってるのが見てとれる。アニメーションも3Dに2Dをちょこちょこ混ぜ合わせており、「スパイダーバース」や「ミッチェル家とマシンの反乱」のような視覚的な面白さも抜群。ヒップホップとカーチェイスの組み合わせもたまらない。最終的に悪人だったマーマレード教授も裏の顔は元伝説の大泥棒クリムゾン・パウであるフォクシントン知事もストーリーとの絡ませ方がちょうどいい。クリムゾン・パウのアクションシーンはこだわりが詰まってて最強にかっこよかった。バイクのチェイスシーンは「マトリックスリローデッド」のオマージュだろうし、ターミネーター2の「アスタラビスタベイビー」が出てきたり、オープニングは「パルプフィクション」のオマージュだったり、他にも何かのオマージュが隠れてそう。「ズートピア」と「オーシャンズ」やルパンを組み合わせた感じ。モブは動物ではなく普通の人間だったり、そんな人間達がウルフや動物達に普通に接していたり、動物の中にも普通のペットみたいなのがいたりと世界観は不思議。恐らくバッドガイズがあくまで見た目や種族から悪人として認識され、その周りの目のせいで彼らは自分達を悪人と無意識に自認してしまった。という事を強調するためにこのような世界観になっているのだろうと思う。現に彼らはなぜ悪人になったのかという過去エピソードなどがなく、見た目や周囲からの目で自然に悪人になってしまっている。実際悪人と言われる人はそのような人が多いのかもしれない。本人達側だけでなく外見やイメージから来る無意識な差別というのも同じくテーマにあるのかな。ディズニーやピクサーならしっかり理由をつけそうだけど、その辺がドリームワークスっぽいなと思った。フォクシントン知事のセリフに象徴されるように、人は色んな面を持っていて、自分の悪人の面も受け入れながら善人の面を出していく、という考え方も深いなと感じた。ただ本当はいい奴でした、ではなく悪い面も受け入れるという性善説を否定するような考え方がこういうアニメ映画にしては進歩的。まあそんなことを考えずにノリノリで楽しむべき映画かもしれないけど。
もちもち

もちもち