穂苅太郎

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの穂苅太郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

Siri も Alexa も語源は別にあるのだが決定する際になかなか発音しない言葉だということで採用されたという話を聞いたことがある。

今回もそう簡単にマルチバースの中で切り替わりがあったらたまらないもんだから、開発者(=主人公の別バージョン)がそのスイッチのキーワードとしたのが“おバカな行動”という設定。これだけで一貫したギャグが完成された訳で、以降時間の半分を使ってこのギャグの連発と相成る。最初こそ笑えたものだが、悲しいかな軸が一本なので早々に飽きてしまった。

ありゃこれちょっと期待はずれだぞ・・・アカデミー賞はとてもじゃないけど無理だな・・・と思った矢先後半の家族関係恢復の段になってなぜだか知らねど涙が止まらなくなってしまった。

前半のおバカアクション連続が大きな伏線となって、どのディメンジョンでもどれだけおバカな格好をしていようが、はたまた石になってしまおうが、より感情が増幅される装置として機能するという驚くべき仕掛けであったことが映画館を後にした後ようやくわかった。

スケールはでかいけど、これ結局壊れかけた家族関係を修復するファミリーハートウォームストーリーなんだよな。最も広げたスケールで最も狭い問題を扱っている。

ということで「コーダ あいのうた」にテーマとしては同じになってしまっているものだから、そういう点では作品賞は取れないのかも。
まあそんなのはどうでもいいや。

「辛いことばかりで楽しいことなんか少ししかない世界」「いや私はそのほんの少しを楽しむ」十分傑作だと思う。
穂苅太郎

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