金春ハリネズミ

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの金春ハリネズミのレビュー・感想・評価

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すごく不思議な映画を見ました。

力技一本劇ともとれるし、精巧に作り上げられたエンタメともとれる。

正直言って非常に見辛い作品です。
少なくとも中盤ほどいった時点で退屈のひとことでした。

文脈が掴めません。
常套手段で考えれば下手としか評価できないシロモノかと。

必要な要素をすっ飛ばして、とかくランダムに数打ちゃ当たる(的に見える)文法に嫌気がさします。
情報量が多い割に、ミソが掴み辛い感覚。
情報を常に垂れ流して全体の密度を測るが、そのほとんどが荒唐無稽に見える(そう思い込む)感じ。
駄作の凡例と錯覚してしまいます。

けど、クライマックスで2回ほど泣いてしまったんですね。
2回も泣いた。
これがどの作用に引っ張られたのかが自分でもイマイチピンとこないわけですよね。
単に親子ものヒューマンドラマに響いたと判断すれば話は早いです。
ただそれやと腑に落ちない自分がいますねなんとなく。

はじめは荒唐無稽に見えた、つまらないドタバタお得パック喜劇も、思い返せばクライマックスに自然と響いています。
ただやり方は好みません。
個人的に言ってきしょいです。

けど最後はちゃっかり泣いちゃうんですね。
涙が止まらないです。

なんなんでしょうこれ。

種々雑多の価値観が蔓延るアメリカです。
映画を作ろうと思えば、ジェンダー、人種問題、マルチバース(ダル過ぎ。要らん。)等、気が狂いそうなほど多くの要素を作品にぶち込まないと評価されない世相です。
そういう込み入った必要不可欠の諦観したスタンスと。
それから従来の物語文法に対する脱構築、カウンターパンチ。

そういうのは確かに本作で感じた
気がします。

従来の映画作品たちに喧嘩ふっかけてる感じ。
これからの時代はこれでいくぞ感。
やってやるぞ感。
(このやり方がちょっと気持ち悪いと思ってしまったワケ。)
そんな感じ。
知らんけど。

だから僕には判断がつかないというか、これをどう解釈すればいいのかが分かりません。
色々雑な部分は本当に多いと思うんです。
設定・語りの点で穴は多い気がする。
スピードが速いから妙にマスクされた感じは否めません。

でもたしかに、今まで見たことのない領域を垣間見えた体感は、なんとなくだけど、残ってる。

いっぺんに、一挙に、どこにでも、なにもかも。

なんとなく分かります。

これからの映画はこういう文脈になっていくのかなぁ、
と、多少興味本位で期待したりしちゃいます。

奇作。

※尚、本作は暗がり演出が重要なので黒が映えるスクリーンで視聴するのが得。