「なんでもどこでもいっぺんに起きているこの世界」で、自分の身に起きてる事はどれだけ意味があるのか。
もし、この世の全てに意味がないとして辛い現実に向き合う意味はあるか、戦い打ちのめされることに報いはあるか。
うんざりするような毎日を壊す最高のカオスは、実はすでにそこにある日常と並行して流れる「あったかもしれない現在」で、無数の可能性のそれぞれを示唆してるからこそ、今がベストとも言える。
とてつもない編集によって魅せられるアシッドみあるマジックリアリズムと、ぶっ飛んだSF設定が映画としてのパワーをとんでもなく底上げしてるけど、描かれるのは小さな今この瞬間、目の前の愛すべき(愛したい)人たちとどう向き合うか、という真摯なドラマだった。
予告の煽りやキャッチを全て捨て去って、フラットな気持ちで映画館に足を運べば、全宇宙を巻き込むほど壮大で、どこにも行けないほど小さな物語の、圧倒的希望に心を打たれ続ける2時間が待っている。