栁夛一

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスの栁夛一のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

「正義の反対は別の正義」と、したり顔で人は言います。そうかもしれないけど、たとえばTwitterで多様な意見の洪水に呑まれながら中立であろうとすればするほど、ニヒリズムやメランコリー、虚無感に飲み込まれそうになるのを感じる。自分が大切に思う価値観も感覚も、他人からしたら無価値なのでは、と。

インスタもそう。友だちの楽しそうな投稿を見ては、ああ自分もこんな風に生きたかった、生きれたのではないかと思うばかり。自分はどこで道を間違えたのかと悔やむことも多々あります。

そんな相対化の暗黒面に陥りそうになりながら、現代社会でSNS中毒者として絶望して生きている内に、何もかも投げ捨ててとっとと逃げ出したくなる。それでも(最近のハリウッドはこの「それでも」っていうのがトレンドなんでしょう)、世界が虚無にしか見えなくても、本当に意味のある時間なんてものがほんの少ししかなくても、自分にとって大切な人や時間を絶対的なものとして大切にしよう。

メッセージ自体はありきたりだけど、結論に至るまでの過程が独特の演出で表現されていて面白かった。

それはそうと、初期のChat GPTにテーマとキーワードだけ入れてシナリオ書いたんか?ってくらい破茶滅茶だった。制作面でダニエルズの作家性を存分に発揮させつつ、マーケティングが大勝利したんでしょうね知らんけど。

以下その他雑感

・何となく「Mr.タスクみたいだな…」と思いながら観てたんですが、セイウチ男もA24配給だったんですね。今更知りました。

・ルッソ兄弟もプロデュースしててビックリした。マルチバースの立役者ということもあって参加したのか知らないけど、最近色んなところで名前を見る気がする。やっぱ映画好きなんですね。
栁夛一

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