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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
中国系移民でアメリカで暮らすエヴリンは、優しい夫と一人娘と暮らす平凡な主婦。だが経営するコインランドリーは破産寸前、ボケて頑迷な実夫、娘の同性愛を理解できず確執は深まるばかり……夫は優しいが頼りにならない。日々の仕事や家事のほか、山と積まれた領収書や税務処理もに囲まれ、いっぱいいっぱいの生活を送っていた。ある日「別のユニバースから来た」と言い出した夫は「全宇宙にカオスをもたらす強大な悪を倒せるのは君だけだ」と告げ、全宇宙の戦いに巻き込まれしてまう。

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1回目、キー・ホイ・クアン目当てで鑑賞。
「グーニーズ」「インディ・ジョーンズ」世代なので、約40年ぶりのスクリーン復帰が嬉しくてしょうがない。

ハチャメチャ面白かった!
ダニエルズの映画なので、ノルソルがパッキリ分かれそうだけど、2023年の賞レースで大旋風を起こしてるの含めてどうかしてて愉快。そんなに万人が手放しで褒める映画でもないっつーか。10年前であればB級映画の傑作として好事家の映画でカルト的人気の一方で、興行的にはボチボチってパターンの作品だと思う。人によって賛否両論、ノルソルくっきり分かれるのが当然。

徹頭徹尾どうかしてるアイデアが満載で、一体脳細胞のどこをどう使ったら思いつくのか?
マルチバースでただでさえ理解しがたいのに、どうかしてる展開とぶっ飛んだ設定。洒落の効いたセリフや衣装の数々……処理しきれない情報量なのに、最後ちょっと泣いちゃったよ。

「優しくあろうよ」のシンプルなメッセージを長い雌伏の時を経た、キー・ホイ・クアンに言われたら実人生相まって沁みるしかない。

繰り返される円のモチーフ。ベーグル🥯とグーグル👀のしょうもないダジャレ。
逃げ場なくループする閉塞のメタファーであり、切っても切れない家族の輪のメタファーでもある。時として息苦しくもあるけど、時には継ぎ目なく繋がり合う関係性。
それにしても謎にベーグル🥯がチョコチョコ出てくる今作。それも大して意味なく。ダニエルズのイタズラ心なんだろか?
他にも「どうかしてる」としか言いようのない、脳みそのどこへんを活性化すれば思いつくのか理解できないアイデアと小ネタが満載なので、何度でも見返したい。それにしてもダニエルズの二人はお尻に何か挿したり・出したりするギャグ好きな🍑

惜しむらくは恋人のベッキーがジョイの同性愛者の設定のためにしか存在してなくて、有機的に物語に関係しないことかしら。彼女にも人生や物語があるはずで、アジア系の女性と愛し合う白人女性って記号的意味以上のものが見えなかった。ベッキーのどういうところに惹かれたのかでジョイのキャラクターにも厚みが増したかもしれない。

湯浅監督の処女作にして傑作「マインドゲーム」のラスト10分を2時間観てる気持ち。
他にも今敏監督の「パプリカ」、宮崎駿監督の「もののけ姫」ら日本のアニメ作品からインスピレーションを受けたことを公言してて、日本の観客として親しみやすかった。


メモ)
監督たち自身もカメオ出演。ダニエル・シャイナートはSM趣味の税務署員や2001年宇宙の旅オマージュなフィンガーソーセージ猿の一人など。ダニエル・クワンはベーグルに吸い込まれるアジア系の男性役。

衣装デザインは日系アメリカン人のシャーリー・クラタ。彼女自身も劇中のジョイと同じく移民二世で、親子の世代間ギャップや互いに一番流暢な言語で話せないもどかしさを経験してたとか。今作ではジョブ・トゥパキをはじめ奇抜な世界観で奇天烈な衣装を数多く制作。(腕にテディ・ベアをつけたジョブのジャケットはジョジョリオンからインスパイアされた説も)難解なシナリオに数多くの世界観、かつアクションもあるとあって短い準備期間では全部オリジナルで作るのは難しく、中盤のパーティシーンでエヴリン着てた「PUNK」て書かれたセーターはまさかの既製品。チャイナタウンで売ってるのをそのまま使ったんだって。
検索したら2018年のファッションプレスの記事で、原宿でストリートスナップされてるのが残ってて面白かったw
https://www.fashion-press.net/snaps/4948


19・22本目
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