あぶりかんぱち

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスのあぶりかんぱちのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

本来アニメとかCGでやりそうなスケール・テンポの話を、生身の人間を使って「あえて」やる。遂にこんな時代が来たんだなぁ…と時代が一周回った感を見ていて感じました。

出来るだけ頭のネジが外れたような言動をすることで違う次元の自分と転移するという設定、アクションとか絶対したことない風貌のキャラクターが繰り出すゴリゴリの戦闘シーン、「レミーのおいしいレストラン」張りのピクサー的展開といった『一本でも十分味のある世界観』を一緒くたにしてしまって、その上で大筋にある"家族愛"というテーマに帰結させる力技、これは凄い映像体験ですね。

正解も不正解もないところまでごちゃ混ぜにしたからこそ、この筋書きが真っ当に思えてくるという脳の回路をショートさせるような造りは誰も真似できないし、真似したところで「エブエブのパクリか!」ってなりそうな気がします。「人類の指がソーセージになる進化を遂げた世界」とか、二徹明けの頭で考えたんかってくらいにぶっ飛んでるのに、作品的に結構重要な役割を担ってたりするのもおもろい。

奇抜な展開や演出に目が行きがちだけど、「誰にでもなりたいものになれる可能性がある」、「隣で寄り添ってくれる人に愛を伝える」、「多様性を受け入れ認め合う」といった日々の暮らしで忘れがちなことをふと教えてくれる、そんな素敵な映画の側面も持っているんだな、と見ていて感じました。国税庁のおばちゃんと心が通じ合うシーンに不意に涙が溢れそうになったのも良い思い出です。かなり好きな部類の映画でした。
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