るか

すずめの戸締まりのるかのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.9
新海誠監督の「災害」三部作の最新作である今作。正直舐めてた。天気の子が個人的にすごく受け付けなかったので、その期待値の低さの分今作はすごく良く感じた。

・虚構と現実の境目
新海誠監督といえばその写実的な日本の街並みの作画が最大の強みと言っても過言ではないだろう。非常にリアリティがある光彩を放ちながらアニメならではの画角で切り取るその息を飲むような絶景は今作も健在。1度監督の目でこの世界を見たいと思うほど。ただ、そんな現実じみた背景の中で起こる圧倒的「非日常」、君の名はで言えばそれは体の入れ替わりだし、天気の子で言えばそれは異常気象なんだろう。今回は全ての人に見えるのは事象の1部と結果の部分としたことで話が全体的に現実によってきた感覚があった。それは話の中で度々主人公が自分のお金の心配をしたり、行く先々で取る食事からも背景だけでなく作中でのキャラクター作りもそれと同様の感覚を得た。上記の通り、それは作品の厚みを増す上ですごく重要な要素だし、今作が良作たる所以なのだろう。

・優等生な日本アニメーション映画
前作までがどうだったかは定かではないが、今作はジブリっぽいしエヴァっぽかったなと感じた。「呪いを受けて自分の家を飛び出す」ハウルっぽさある物語のスタートに加え元温泉街の廃墟はまるで千と千尋の神隠しさながら。ミミズを俯瞰で撮るのはエヴァの使徒っぽさがある自然災害と敵の狭間のような感じだったし、なんか色んな映画のいい所を持ってきてつけた感じがした。

・正面から向かい合って「克服」した震災
新海誠監督の三部作が3.11に起因する自然災害がテーマの根底にあるのは有名な事だが、今作は包み隠すことなく正面から3.11を描く。主人公は震災で母親を無くした女子高生。家が元あった場所がカットが変わると基礎だけになっているのは中々来るものがあった。日本は地震大国、自然災害大国であることを日常として風化させて行くのではなくしっかり正面から向き合って克服することを視覚的に提示するのは監督の強い思いを感じれて非常に良かった。

・丁寧な伏線配置
天気の子は伏線というより中盤で作品がネタバレしてくるみたいな所があって、しかももう完全に分かっていることがわかって終わり、感動!すごいでしょ?みたいな感じだったけど今作はわかったことからもう一度展開があるからネタバレが丁寧な伏線張りに進化していた。こーいう分かりやすい説明も売れる原因なんだろーなーと感心。
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