オードリー

すずめの戸締まりのオードリーのネタバレレビュー・内容・結末

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

いわずもがなのとてつもなく綺麗な映像
3DCGなども上手いことミックスされたアニメーションは間違いなく前作よりもパワーアップしたと感じた。

戸締まりのお話という事で制作発表の時の監督のコメントで「何かを始めることより、終わらせることの方が難しい、一つ一つの散らかってしまった可能性をもう一度、きちんと見つめて、きちんと閉じていく、そのことによって次に進んで行く、新しい場所を見つけるという物語というのが今求められているのではないか」ということを言っていた。
このコメントに共感というか、そんな新海誠監督らしいといえるような話をみられるということにワクワクしてずっと楽しみにしていました。
ロードムービーというのも個人的に好きで、開放的な風景、自然と都会をどちらも描くという欲張りな映像にも満足。

ストーリー的には最初から飛ばしてた印象でその分中盤でちょっとダレた感はあったけどラスト満足出来たから🙆‍♂️

まず好きなシーンは最初に扉を閉じるところからの完璧なタイトルバック。鳥肌もの。アマプラ等で公開されている冒頭映像もここまであったので繰り返しみちゃうと思う。

そして自転車に2人乗りするシーン
雨上がりというのも内容とのリンクもあるし、真骨頂の綺麗さで感動する。
漕ぐのは叔母だけど2人とも幸せそうな表情をしていて細かい言葉のいらないこれまでの辛いだけでなく、過ごした幸せな時間が伺えるような2人の関係性がみえる感じがよかった。
このシーンの最後にひぐらしが鳴いたところで自分のなかで完全に優勝した。
こういう大人と子どもやそこで分けきれないお互いの人間らしさがみえてくるのがいいなぁと思う。

3本足のイスやそうたのただのイケメンではない子供らしさも不完全な人間の肯定という感じはベタかもだけど好きな設定。

何度も映される鍵を閉める、開けるカット好き。
扉を閉めて、そして開ける話でもあるんだと実感
「いってきます」で終わるのも良かった。
RADWIMPSの音楽も今回は少し控えめで、でもやっぱりめちゃ良かった。

「君の名は。」「天気の子」で扱ってきた災害、東日本大地震という悲劇を改めてより直接的に表していくのは、受け取り難い人も生んでしまうし、シリアスな内容になってしまうという意味でとても覚悟がいる事と思う。
「君の名は。」で避けることの出来た悲劇は今作では夢ではなくすでに実際に起こっているというのも切実。
その災害を扱う覚悟はすずめの閉じ込めた過去と向き合う姿に映し出され、過去の自分へ放たれた言葉は受け手の当時の自分へどれだけ届いたかは分からないが、今までの自分を肯定し、これからの自分自身を生かす大きな力になったのだろう。
その言葉は高校生らしく単純な言葉だけど、強く観客にも伝わってきた、と思う。
そのラストの自分との邂逅は物語全体の部分が気に入らなかったという人にも否定出来ない良いシーンだったのでは、と思う。

セカイ系という文脈では正直あまり詳しくはないからあまり語れないけど、愛する人を犠牲に、災害を止めて世界を救ったすずめは、もう一度その選択をやり直し、結果的には元のままダイジンだけが犠牲になったのは都合良く終わったようにも思える。
それはエゴを突き通した「天気の子」と比べれば今回の結末はご都合主義のハッピーエンドにみえる。でもそこは前述した災害や自分との対話の描いた誠実さが表れているからこそ、ポジティブで優しいメッセージとして納得できる結末だと思う。

恋愛物語でない物語の恋愛要素はあり方によって全体が安っぽくなりかねないって感じで、だからこそ一つの軸としてしっかり描かれた今作は潔いが、過程の描写がイマイチ少なくて共感しづらいところは正直ある。けどこれは感覚がおじさんになってきてるからなのかなとも思った。寂し。

優しくてポジティブな内容で新海誠好きだなとまた思えた映画。これからもしっかり追っていきます。

新海誠作品では常連の猫は「猫の集会」のセルフオマージュの感じもあって可愛かった。
閉じ師という架空の設定や歴史を組み込む演出はさすが。

ミミズの迫力は特に最初すごくて、消えた後に雨降って虹でたりする感じはエヴァの使徒だなーと思った。

神木隆之介の声は今回が1番合ってたんじゃないかと思った。キャラクターも好き。懐メロ入れてくる感じ抜け目ない。
芹澤というキャラクターは今回間を取り持つような役回りではあったけど、あくまで自由に自分の意志で動き回っているようにみえて、かっこよくて魅力的だなと思った。


書くのに時間かかってしまったので2回目をみてからの投稿
2回目 2022/12/05緑ヶ丘
改めてみてミミズが現れる展開が何度もあるのは少ししつこいようでもあるけど、一回一回ですずめとそうた2人の関係が変わっていくのがちゃんと描かれていて、本当によく出来ているなと思った。

「君の名は。」と「天気の子」との繋がりについて、それぞれのサントラの曲が一曲ずつ使われていたことと、「私知らなかった、〜」「夢じゃなかった」というセリフもまたそれぞれからそのまま使われてるような気がしたので、そこもまたかなり意識的だったのかなとか考えたりしました。

ラブストーリーについて色々書いたけど、もう一回みて、恋愛は明確にはあまり描かれていなくて、2人にとってそれぞれが大切な人(好きな人)になったことが、死ぬのが怖くないという思いから生きたいという思いに変わったという面があってあくまで、未来や明日を生きる象徴的な意味での恋愛だったのかなとか思った。

扉だけでなく、立ち入り禁止の柵や車のドアなどをすずめが飛び越えるシーンが多くてそれも象徴的。

メモ


彼岸花
オードリー

オードリー