メランクさん

すずめの戸締まりのメランクさんのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
5.0
次の新海誠はちゃんと映画館行こうと思ってたけど、
いや〜本当に観にきてよかった〜!

君の名はも天気の子も天災についての話だったけど、
今回は直接的に311を描いていて、
しかもその孤児が主人公ということで、
ぜんぜん知らなかったから食らったな〜。

そもそも自分が要石を退いてしまったとこから始まり、
草太の戸締まりに付き添ってく鈴芽なんだけど、
興味深かったのは伯母を納得させることができず、
ずっと気が気じゃない伯母が並行して語られてくこと。
超現実な少女の冒険ものにはさせてくれず、
じっとシャツの裾を掴まれてるような感じは
観ていて歯痒くも感じさせるんだけれど、
観終わってみるとそこが今作の肝だったのかもしれない。

鈴芽自身は世界を救うっていう意識でやってることだけど、
結局のところは鈴芽の個人的な話に帰着していく。
ってのは「世界系」の説明そのものだけれど、
震災というマスにとっての悲劇というのが、
個人の悲しみとして回収されるべきことだというのは
たしかに「世界系」として語っていくべき話ということなのかも。

あれだけたくさんの人が死に、傷を負った災害に対し、
我々が何をしてきたかと言えば、
それは個人個人ができることをしてきたとしか言えない。
でも死んだ人は帰らないし何かを元に戻すことができぬ以上、
締まらぬままの扉は残されたままであり、
決して満たされぬ何かが残されている。
だから先に進むために必要なこともまた、
誰かと生活し、誰かと出会い、
そして閉ざした記憶を思い出すこと。
そういうことを続けてくしかないんだよなぁ。

世界を襲う災害を救うことと並行して、
2人の若い男女がいい感じになっていく話。

新海誠の作品はいつもそんな話と言えちゃうけれど、
やっぱそれって高らかに言ってくべきメッセージだと思うし、
世界と向き合うことが個人個人の戦いである以上、
世界系ってちゃんと理にかなっているんじゃないか。
そう感じた作品でした。

もはや誰もが観に行く作品になってる新海誠だけど、
私は間違いなく肯定していきたい。
と確信した忘れがたい一作でした。