常盤しのぶ

すずめの戸締まりの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)
3.5
先に言ってほしかった。黒髪ロング男の安否を気遣う口悪男の存在を。黒髪ロング男だけでも私のヘキにクリティカルヒットなのに、口の悪い世話焼き男を追加でお出しするな!! 気が狂う!! 80年代ソング好きってなんやねん!! もう!! 大好き!!

本作は言うまでもなく過去に日本で発生した震災をモチーフにしている。何も情報がなかった公開初日、本編中にJアラートが鳴り響き、震災のトラウマが蘇ったとSNSで騒ぎになったのを覚えている。確かに東日本大震災から10年そこら経過したとはいえ、それでもまだ10年しか経っていない。まだ当時の傷が癒えていない人も少なからず存在したと思う。そんな中で何の警告もないのは少々不親切ではないかと思った。要するに本作を公開するのは少々早すぎたと私は思う。

過去の被災地を巡るロードムービーの前半、各地の災害の根源をなんとかする後半、それぞれ良い部分はあったと思う。椅子になった草太かわいい。寝相悪い草太かわいい。それはそれとして、全体的に中だるみが多かったように思う。これに関しては新海誠の味と言ってしまえばそれまでだが、本作は過去二作と比べて特に顕著だと思った。

更に本作は『男と女が手を取り合って大きな災害に立ち向かう』という構図であるため、見方によっては過去二作の焼き直しでしかない。そのあたりの目新しさのなさが中だるみの印象に繋がっているのだと思う。

個人的には前述している芹沢の存在がウェイトの殆どを占めている。彼のお陰でかろうじて私の中で一定の高評価をキープできていると言っても過言ではない。駄作とまでは言わないが、凡作の域を出ない作品に感じられた。