KaZui

生きる LIVINGのKaZuiのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.0
💬黒澤明監督の『生きる』のリメイク。ビル・ナイ主演。余命宣告を受け、人生を見つめ直す1人の男の話。余命半年、残りの人生を楽しもうと貯金をおろすもそのやり方が分からない男。息子夫婦と同居しているが、特に義娘からは煙たがられており、不器用な性格から上手くコミュニケーションを取れないでいた。壁にかけたコートに向かって、余命わずかであることを打ち明ける練習をするシーンが印象的。最後の最後に青年時代、紳士を志した自分に恥じぬ選択をした主人公に胸を打たれる。また、社会というか人間というかのどうしようもない苦さも感じた。主人公の死後、職場の同僚たちが彼の最後の仕事について語り合うシーンは特に印象的で、各々の目で見た主人公の姿を回顧していくために自分もその思い出を共有するような素敵な時間を過ごすことが出来る。そして、彼らは同じような志を持って仕事をしようと誓いをたてるのだが、しばらくするとかつての蝕まれた姿に戻ってしまっていた。これが社会の中では全然ありうること、むしろ自然に感じてしまったのが悲しかった。それでも主人公の意思を継いだ若者が生まれたのには光が見える。彼もまた“ゾンビ”になってしまうのではなく、“紳士”の心を紡いでいくといいなと思う。ビル・ナイの演技が随所で光っていた。

✒️「君がつけたあだ名は?」「ミスター・ゾンビ」「ミスター・ゾンビ。昔は違った。君くらいの年の頃、もっと小さい頃も。私がなりたかったのは”紳士“だ。大げさな意味じゃない。子供の頃、朝、駅に行くと、スーツに帽子の男たちが並んで列車を待っていた。そういう大人だ。自分もその一員になりたいと。なぜゾンビに?だんだんと蝕まれた。月日を重ねるごとに。だから気づかなかった。変わってゆく自分に。だが、あの日君をみて思い出したんだ。生きるとはどういうことか」

✒️「生きることなく人生を終えたくない」

初鑑賞:2023年5月26日
鑑賞方法:飛行機
2023年105本目。
5月20本目。

🗣飛行機内で鑑賞しました。思いがけず、とても良い映画でした。紳士たれ。
KaZui

KaZui