オリジナルに劣らぬ傑作だった。志村喬の鬼気迫る表情とは違い、ビル・ナイは声に出せない哀しみを繊細に表現していて良かった。
ピーターとマーガレットのドラマを追加したのも物語に深みを与えていた。彼らが主人公ウィリアムと関わることで「生きる」ことを学び、それが観客とも繋がるという構成は見事。エイミー・ルー・ウッドもハマり役だった。
50年代イギリスの衣装も再現度が高く、ロケーションも綺麗だった。撮影も素晴らしく、終始画面に温かい光が溢れた良い画作りだった。
「ハッピーバースデー」の演出を敢えてやらないのも好感を持った。そのままやるのではなく、他の部分で違いをつけようという心意気を感じた。オリジナルよりも絶望感は薄れているが、その分リアルなドラマ要素(息子夫婦とのやり取りなど)やピーターと観客に希望を持たせるラストシーンによって、オリジナルとは違う良い味を出していた。