shunsukeh

生きる LIVINGのshunsukehのネタバレレビュー・内容・結末

生きる LIVING(2022年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

この映画をその原作としている黒澤明の「生きる」と比較せずに観ることは難しいので、その比較を行う。
黒澤は死期を知った主人公のうろたえ様をおかしみを添えて描いたが、この映画はあくまでシリアスだ。黒澤は主人公が一旦享楽に溺れ落ち着きを取り戻す過程を丁寧に描いたが、この映画はうろたえと落ち着きへの移行が不明確である。黒澤は主人公の同僚の若い女性の主人公を魅了する活力を分かりやすく描いたが、この映画ではその女性の活力の描きが不十分である。また、黒澤は彼女から主人公が得る「物を作る」という行動指針を明確に描いたが、この映画ではそれがない。この映画では、終盤に主人公が自分の心境を彼女に台詞で伝えるが、黒澤はそれを行わず主人公の行動でそれを示すのみである。また、同様にこの映画では、主人公の若い同僚に主人公が公園で死を迎える前の心境を語らせているが、黒澤はその時の様子を描くのみだ。
このように観ていくと、黒澤明の「生きる」の方が主人公の心境や行動の変化の必然性を頼丁寧に描きながら、ポイントでは、敢えてそれを言語化せず、観る者に委ね想像させそれが深い味わいに繋がっている。その上で、敢えてこの映画の意義を考えるなら、その観る者に委ねられたところを解説した、ということになるが言うまでもなくそれは蛇足である。
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