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DEATH DAYSのシのレビュー・感想・評価

DEATH DAYS(2021年製作の映画)
4.7
やっぱり長久監督の作り出す映像は光も色も音もカメラワークも目まぐるしくて最高。
10歳、20歳、30歳、31歳、40歳のそれぞれのシーンを、全て同じコンクリートの光の差さない倉庫みたいな部屋で撮っていたのに驚きがあったし、独特の閉鎖感があって面白かった。同じ部屋だけど、カメラ何台あるの?てくらいカットがさまざまで面白くて飽きない。同じ舞台でセットの小道具だけ変える感じが演劇のようだった(というかワンカットが長いところはほぼ演劇)。音楽が良かった。ドビュッシーの月の光自体大好きだし、アレンジが怖くて良かった。映画の象徴になったり、頭に残って離れないフレーズが出てくるのも毎度ながら面白い。

誰もいつ死ぬかわからなくて次の瞬間に大きな地震が来て、人に刺されて、車が突っ込んできて死ぬかもしれないとよく、一瞬だけ考えることがあるけど不思議とどれも誰かの夢の話みたいだから「無い話」という前提で生きている。震源地は包丁を取り出す場所は火をつける場所はどこだってよくて、誰もかもみんな神頼みするしかもうない。そんな当てずっぽうの運任せの数打ちゃ当たるの世界で命の尊さなんて説かれても困るし、ぐったりしてしまう。
でも死んでない私たち 死ぬ寸前の私たち 死を浮き彫りにしてやっと生きてると、「生の実感」とか言わなきゃままならないくらい生きちゃっている私たち まだ死んでなくて、都合によって死を嫌いだと言ったり望んだりする、ただ吸って吐いている私たち まだ死んでないことは、やっぱり個人的に嬉しい。
WE ARE LITTLE ZOMBIESに続いて生きることや死ぬことを大きな題材に据えているというのが、誰しもにストレートに伝わるし刺さるんじゃないかと思った。伝わらなくても別にいいんだろうけど。題材とか関係ないくらいイメージの作り込みが緻密で最高なのでこれからも追い続けたい監督です!
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