lil谷

魂のまなざしのlil谷のレビュー・感想・評価

魂のまなざし(2020年製作の映画)
3.4
シャルフベックについて全く知らずに観たので、自分の知識不足からか、50代以前のキャリアや私生活についてばっさり省略されているからか、エイナルとの恋愛にフォーカスを当てる意味がいまひとつ分からなかった。フィンランドを代表する画家なのでその辺の説明は不要ということなのか。

エイナルと画商ヨースタが訪れる前の細々とした生活から一転、経済的に余裕が出てくる描写など、才能ある画家が世間的に認知されるには、やり手のプロモーターの存在も必要なのかと考えてみたり。「ヨースタが病弱な自分を売りにした」と言っている場面があったが、実際こうして彼女の映画を見たあとで、エイナルをモデルにした絵をその恋愛物語と重ね合わせて見るわけで、当時も画家の人生の物語込みで売り出していたのだなと。

母親との小突きあいのような関係性はリアル。余計なことを言わずにはいられない母親だが、愛情がないわけではないのは今わの際に娘の頬に手を当てる場面にあらわれている。ずっと薄っすら寒そうな自然描写同様に、地味な味付けがよかった。

昔の画家や作家の伝記物だと手紙のやり取りが再現されたりするけれど、現代の芸術家の伝記物が作られるときにはどうなるのか。追いメッセージ送ったけど既読無視された、みたいなことになるのか。

親友役のクリスタ・コソネンは、トーベ・ヤンソンの伝記映画「TOVE」ではエイナル的位置付けのキャラクターを演じていたが、独特の魅力がある役者で要チェックだなと思った。
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