MasaichiYaguchi

ダイナソーJr./フリークシーンのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.9
1984年にマサチューセッツ州で結成されたダイナソーJr.は、切なく哀愁を帯びたメロディを殺伐とした轟音で包み込む唯一無二のサウンドで絶大な支持を集め、メンバー交代や活動休止を経て現在も新たな音楽を生み出し続けている。
このドキュメンタリーでは、ギター兼ボーカルのJ・マスキス、ベースのルー・バーロウ、ドラムのマーフというオリジナルメンバー3人の関係性にフォーカスしながら、貴重な過去のフッテージや彼らに近しいミュージシャンたちの証言などを通し、彼らの約30年にわたる軌跡を辿っていく。
また本作はバンド自身が製作を手がけ、J・マスキスの義理の親族である音楽映像作家フィリップ・ロッケンハイムが監督を務めている。
ダイナソーJr.の音楽は、売れようとするものでもなく、他人に聴いてもらおうとするものでもない。
それは、ルー・バーロウの「どのぐらい客が集まるか、どれだけの人が聴いてくれるのかと考えたことがない。俺たちは客を襲うためにライヴをやっていた」という言葉からも明らかだ。
人気を獲得するためにギラギラするロック・スター然としたバンドとは一線を画し、音楽以外には一切関心がない三人のコミュニケーションは唯一、音楽を通じて図られる。
そんな音楽だけで結ばれていたオリジナル・メンバー3人、夫々の正直な証言を引き出し、そして2005年以降再集結した現在までを誇張もせず、しかし愛ある視点で、その歩みを本作は映し出す。