幽斎

マザーズの幽斎のレビュー・感想・評価

マザーズ(2016年製作の映画)
4.0
未体験ゾーンの映画たち2022。私は京都住まいなので鑑賞の度に新快速で大阪へ遠征する。既に「ザ・ビーチ」「アクセル・フォール」「TUBE チューブ 死の脱出」「クリフハンガー/フォールアウト」「ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス」レビュー済。コレ系の作品は劇場で観た方が面白い。シネリーブル梅田で鑑賞。

論評の前に叱り飛ばす奴が居る、誰の事かって?アメイジングD.C.、お前だよ(怒)。また登場しない美女で吊るとか、釣り堀のヘラブナじゃ無いんだから。ジャケ写詐欺がお家芸なのは先刻ご承知だが、デンマーク版を見たとは到底思えないし、市販の円盤では更に違うデザインと完全に迷走。因みにオリジナルは此方。
www.justwatch.com/jp/%E6%98%A0%E7%94%BB/shelley

Ali Abbasi監督は「ボーダー 二つの世界」カンヌ映画祭ある視点グランプリ受賞。その評価を得てデビューの本作をサルベージ。子供を産む事が出来ない夫婦の為に、代理母を引き受けたシングルマザー。しかし胎内の子が成長すると、様々な異変に見舞われる姿を描く。Ellen Dorrit Petersenは2017年のスリラー話題作「テルマ」で注目された。Cosmina Stratanは「汚れなき祈り」カンヌ映画祭女優賞の実力者。皆さんのお目当てフェスティバル・スリラーの最高傑作「ミッドサマー」Bjorn Andresen。彼は名作「ベニスに死す」世紀の美少年でデビュー。「世界で一番美しい少年」も必見。

Abbasi監督は「ボーダー 二つの世界」がファンタジーとして扱われる事に「理由が分らない」とする一方、本作もホラーと区分される事は違うと述べてる。更に監督はホラーやファンタジーのジャンル映画のファンでは無いと公言。本作は監督独特のセンテンスが特徴で、プロットに狐に抓まれた感覚に陥るかも。不安に駆られ伏線の見落としが無いか、疑心暗鬼に為る方も居るやもしれない。監督はイラン出身でデンマーク国立映画学校に留学。監督がジャンルを否定する理由は「ボーダー 二つの世界」ご覧の方なら通じる筈。

ヨーロッパの映画学校は監督の適性を見極め得意なジャンルの「選別」を図ります。アメリカが取りあえずポルノかホラーからスタートとは環境も違うが、中東出身の監督は宗教観も含め、理詰めの心理学とは違う現実とは異なる出来事が、人の心を揺さぶる。それを撮りたいと熱く語る。つまり本作もストーリィやプロットは重視して無い。私が代わりにテーマを決めるなら「悪とは人の外側では無く内側に潜むモノ」だからホラーでは無く、スリラーなのだ。

【ネタバレ】エロい考察も有るので、自己責任でご覧下さい【閲覧注意!】

劇場で観て大きく腑に落ちない点が有り、ソレを配信で観て確信に変わったが、ヌードシーンで「リアルに」妊娠してるのが分る。私は産科婦人科医では無いので推論だが、アレは視覚効果では無い。全てのシーンがソウだとは言えないし、最初はお腹も膨れて無いので撮影の後か、撮影前に妊娠したタイミングと思われる。普通なら編集とかカメラワークで誤魔化せるし、予算は係るがモーフィングで加工する手も。この変な熱意が「ボーダー 二つの世界」に繋がると思えば納得。

変な熱意と言えば日本はモザイクで分り難いが、製作にスウェーデンが参加してるだけ有り、本編で「Fist fuck」をしてる。これも編集とかカメラワークで誤魔化せる、でも、ヤッちゃう(笑)。しかも、夫婦の営みでは無く悪夢の中で。このシーンの解釈が大きなフックで有る事はお分かりだろう。でも、日本では絶対に無理(邦画に詳しくないので異論は認める)。私がアメリカのAVを見た時はFistingと言ってた気もしたが、エグイ奴に為ると膣と肛門に両手を挿入、神に誓ってやらないよ絶対に(笑)。

「フィストファック」膣、若しくは肛門に手か拳を入れて行うハードSM。レズビアンで行うケースも多い。アメリカにはアナルに挿入するアナルフィストファックも有る。フィスト物が日本に馴染まないのは衛生観念の違い。アメリカのポルノは、ペニスを女性器に入れたと思ったら、抜いてアナルに入れてまた女性器、も珍しくない。しかし腸の中は雑菌だらけで、感染症に為り易い。私がアメリカで生活した時にムリだったのは、彼らは靴を履いたままベッドに寝てしまう、衛生面の「汚い」感性の違い。

何の話でしたっけ?、あぁ映画の話でしたね(笑)。正気に戻ると本作は「ローズマリーの赤ちゃん」をハイコンシャスなナチュラリストが人種と貧困を「意識高い系」を隠れ蓑に残虐に映し出すが、演出面は「シャイニング」を彷彿とさせるテイストも有り、論理的な結末を求める方は、犬の様にお預けを喰らうので評価は一気に下がるだろう。意識高い系が我が子を得る為、外国人労働者を罪の意識すら持たず切り棄てる。恐怖の正体は赤ちゃんでは無く、女性由来の「悪」それは子供を欲する母性、守ろうとする理性、盲目に成れる本性。「全ての女性は悪を秘めてる」これがアンサイズニアだ。

ミステリー小説ならフーダニットの変化球。性と生の真理を問うマタニティ・スリラー。
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