しっとりとした海辺の街にある映画館を捉えるシックな色合いのキャメラとか音楽も良いし材料は揃っているんですけどね、どうもパンチが足りないと云うか…。
要はオリヴィア・コールマン演じる映画館で長年働いている孤独な女性のヒラリーと未来あるが黒人であることで差別されているスティーブンとの世代も人種も越えた恋愛模様を貫いて描いてくれれば、いささかクサイ展開でもじっくり観れたと思うんですよ。
そこのぶつかり合いのドラマ展開をこの映画は逸らしていくでしょ?
精神疾患で時々ヒステリックな行動を起こすヒラリーと彼女を何とか支えようと頑張る若いスティーブン、しかしそれでは未来ある彼の夢を奪ってしまうから身を引いてゆくヒラリー、みたいな流れがあるのかと思っていたら、なんか消化不良気味に雰囲気だけで誤魔化す演出で。
それから、ちょっと許せないと云うか、【炎のランナー】のプレミア上映がセレブを招いてエンパイア座で行われる場面あるでしょ?
そこでヒラリーが映画館主のコリン・ファース演じるエリスの性癖を彼の奥さんにヒステリックに暴露するところ。
だってバックに上映中の【炎のランナー】のテーマ曲が聞こえてる中でこんな場面描くんですよ。
ちょっとこれは先日お亡くなりになられたヒュー・ハドソン監督に対する侮辱に感じました。
サム・メンデス監督は本当に映画への愛情を持ってるのですかね?
少なくとも彼の今までの映画の中で1番キレが無いですね。まァ普通の小品ですよ。