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エンパイア・オブ・ライトのEPATAYのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.3
すごく良かった......
今年ベスト候補。

差別と暴力にあふれる世界で押し潰されそうになる主人公たちを照らす映画館の“光”

海岸沿い映画館というロケーションの良さを活かした全体の美しさはビジュアル的にも良いし、後に訪れる不穏さと綺麗な対比にもなっている。

個人的に一番良かったのは差別の描き方で、差別者と被差別者の単純な構造ではなく、黒人差別に憤るスティーヴンが老人を馬鹿にしたり無意識に女性差別的な言動をしたり、単純じゃないからこそ根深い差別問題の本質を上手く突いていたと思う。

マイノリティと言われる人たちも別の属性から見ればマジョリティになることもあって、しかも本人はそのことには無自覚という。

そしてそれを観客に自分毎として体感させるのが、中年女性と青年男性の恋愛という構図っていうね。

中年男性と青年女性の恋愛者は腐るほどあって、観客もそこには何も思わないのに性別が逆になるだけでなにか特別性を感じてしまうというのはまさに劇中描かれている差別の構図そのものにならない。

ただ、そんな観客含めて全ての人を包み込んでくれるのが映画館で、暗闇を知っている人だけが光に気づくことができるという構成にはそりゃ心動かされるよ。

映画館を出たあとの町並みが少し明るく見える素敵な映画だった。
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