このレビューはネタバレを含みます
◆移ろい
廃墟は、受け止め方により真反対の心象を起こさせる。
すずめの戸締まりでは、被災跡の風景をきれいだと言った男に対して、主人公のすずめちゃんは、どこが?と聞き返す。過去を知る彼女にとってそこはいつまでも悲しい時間が重なっている。
本作では、長年映画館でスタッフを務める主人公が、新人スタッフの男の子を、不況で使われなくなったエリアに案内する。昔は美しかったのよ、と自虐を重ねるような伝え方をするが、男の子は今も美しいと返す。
流れた時間にも目を向けつつ、今を肯定する、素敵なシーンだなーと感じた。
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また空間がとても魅力的…海に面した高天井のラウンジは、全面ガラス窓で、腰壁沿いにソファが並ぶ。この非日常的なバランス感がたまらない!
私はここまで開口のある劇場施設をこの目で見たことがないが、老朽化が進み柔らかな光や風の差し込むラウンジと、その後ろに続く厳かな劇場は、現実と非現実を隔てる儚い境界になっているようなイメージを持った。
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◆移ろい2
映像技師の老人と男の子が、軒先でタバコをふかしながらフィルムの納品を待っているシーン、
何も映さずとも、2人の間に流れた時間を感じられて好きだった。行間を自然に読めるような心地よさが本作にはたくさんあった。
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ルック1.0
シナリオ0.5
役者1.0
深度1.0