つかれぐま

エンパイア・オブ・ライトのつかれぐまのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
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コールマンの演技、ディーキンスの撮影、映画館「エンパイヤ」の美しいセット。吸い込まれるように観たのだが、これだけ揃えておいて脚本が残念。

ひとつひとつのテーマ&エピソードには一見の価値がある。特に統合失調症という病の怖さと辛さを演じたオリビア・コールマンは素晴らしい。だが、それらのエピソードと映画(映画館)という舞台設定が有機的に繋がらない。作品舞台が他(たとえばレストランとか)であっても成立してしまう。あとから解説で「暗闇の中の一筋の光」という一文を読んだが、観ている間はピンとこなかったかな。あの二人がカップルというのも不釣り合い過ぎる。どちらが強者とかじゃなくて、恋愛に落ちるには共有できるものが無さすぎるような。

サム・メンデス初めての単独脚本作品らしい。いかにも聡明な人の頭の中で作られた脚本という印象。自分の中で完結してしまい、観客とそれが共有できていないのが残念。ちょうど今の細田守作品と同じだ。

『チャンス』は大好きな作品だが、本作のラストに相応しいとは思えず。