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TAR/ターのharu3uのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

世界最高峰ベルリン・フィルに君臨する女性マエストロの栄光と転落を描く。
傲慢な言動すら魅力に映るケイト・ブランシェットさまの圧倒的カリスマ性に、ただひれ伏すのみ。。
名だたる先人指揮者のレコードを床に並べ足で選分ける不遜さは、彼女が男性優位の世界で頂点を極めたことの象徴。
キャリアに亀裂が生じ、狂気と共に追い詰められていく中でも気高さは曇らず。2時間半ずっとずっと美しい人だった。


告発された側から見るセクハラパワハラ描写はグレーの印象を受けたけど、私がケイトさま信者だからかしら。
ちょっと自分の判断に自信がないし、怖い。

音楽院での高圧的な指導は(素晴らしい長回し!!)、頭でっかちな学生に厳しくも正面からぶつかった誠実なものに思えた。
きっと社会に出れば、更に悪意に満ちた批判に晒される。

お気に入りの若いアシスタントは副指揮者に指名されず、新人チェロ奏者へのえこ贔屓だって、彼女は覆面オーディションを実力で勝ち抜いた。性的強要の描写はない。
かつてターが指導した若手指揮者の自殺に関しても、不穏な香りはしつつ、実際に何があったのかはわからない。


光が強く眩しいほど、闇も深くなる。リディア・ターは権力に溺れそれを濫用したのか、それともキャンセルカルチャーの波にのまれた被害者か。
黒白つけられるほどの判断材料は揃っていないからこそ、観客それぞれがどう思いたいのか暴かれちゃうね。
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