nana

TAR/ターのnanaのネタバレレビュー・内容・結末

TAR/ター(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

『セッション』的なスポ根音楽映画かと思いきや、だんだん心霊映画のようになっていくこの作品。
やけに長々と続く序盤のインタビューシーンが、既に今作のテーマを物語っていたように思えます。

いくら麗しいケイト・ブランシェットが演じているとはいえ、権力を行使したハラスメントの数々はかなりきつい。
『キャロル』でルーニー・マーラを見つめていた時とは違う、お気に入り生徒を見つめるゲスな視線演技は絶品です。
作中で実際に指揮をし、ドイツ語を堪能に操る彼女。
ケイト・ブランシェットの演技が凄い、なんて私達が今更言うことではありませんが、今作では更に圧倒されました。
オートクチュールのドレスを一着仕立てることができるようになったダニエル・デイ=ルイスを思い出します。

女性であり、レズビアンを公表している彼女があの世界であそこまで登りつめるためにはそれほどのガッツが必要だったのだとも思えます。
自分自身だけでなく、周りの人間すら指揮をして完璧にコントロールしていたター。
メトロノームがあればいいのではない、時間を操るために指揮者が存在しているのだ。
そう語った彼女は、ラストでヘッドホンをし、定められた時間の中で指揮をします。

どん底まで行ったかもしれない。
ひとりのモンスターは狩られてしまった。
これまで彼女がしてきたことを考えれば、当然の報いだろう。
それでも彼女はまた一から音楽へと向き合います。
人生は続く。
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